人気ブログ『ヤスの備忘録』でもおなじみ、
社会分析アナリストの高島康司氏をお招きして、

1 世界で今、起きていること
2 人間の新たなる「精神性」「意識」「思考」

について、飲みながら自由闊達に話すシリーズ。
基本的に毎週更新。

〇『酔っぱらいオヤジのSpiritual Meeting』第81回
「内部告発者に見る精神の形」(前半)

ゲスト:高島康司氏
聞き手:西塚裕一(五目舎)
2017年6月14日 東京・八王子「トラハル」にて収録

西塚 『酔っぱらいオヤジのSpiritual Meeting』自体は基本的に毎週行なっているわけですが、ここのところ僕が書籍の原稿や何かでテープ起こしができなかったりということが続いてます。また今、進行中のヤスさんの書籍の打ち合わせもあったりして、僕がうまくテーマ出しができないまま終わったりしてました。今日で『おやすぴ』は81回になりますが、今日はいつものように進行したいと思います。ではヤスさん、よろしくお願いします、カンパーイ。

ヤス はい、カンパーイ、よろしくお願いします。

西塚 もう今回のメルマガは書かれたんですか?

ヤス いや、まだ途中で。

トランプ弾劾裁判問題の風向きが変わった

西塚 前回のメルマガのちょっと前になるかもしれませんが、例のトランプの弾劾裁判問題ですね。トランプが弾劾されるんじゃないかという話から、やはりこれは弾劾は無理だわという話になってきた。セス・リッチの死の疑惑の話も出てきたりして、ロシアゲート問題に関して民主党内部から告発が出てきたという…。ロシアゲートはいよいよ民主党のマッチポンプというか、トランプ下ろしのための陰謀ではないかという話にもなってきました。もうトランプの弾劾どころではないですね。その後、何か情報はありますか?

ヤス すごく大きな発展があったんですよ。ひとつは、FBIのコミー(元)長官の証言がありますね。2週間くらい前に上院の公聴会におけるコミー長官の証言があって、日本では一部しか報道されていません。

西塚 やはり報道されてませんか。僕も最近はネットでしかニュースを見ないものですから。

ヤス 相当、編集というかカットされて、重要だと思われる部分しか報道されていない。重要な部分とは、トランプからの捜査妨害があったのかどうかの一点に絞られるわけです。そしてコミー長官は、ホワイトハウスでトランプと一対一になったときに、この仕事が欲しいのか、と言われたと。どういう意味ですかと聞くと、私に忠誠を誓えと言われた。いや、私は誠実に仕事をやりたいと言うと、私はその誠実な忠誠が欲しいんだと。

西塚 安倍みたいですね(笑)。

ヤス 安倍みたいに、まさに。そういうことが、捜査妨害にあたるのかどうか。捜査妨害なら、これは罪になる。そうすると弾劾裁判の対象になる。しかし、捜査をやめろと言ってるわけではない。アメリカでも意見がふたつに分かれていて、はっきりと捜査をやめろと言ってるわけではないんだから、捜査妨害にはあたらないという意見と、コミー長官は、私はプレッシャーを感じたと、捜査をやめてくれというプレッシャーだと思ったと言ってるので、相手にそのような感情を抱かせたということは、これは捜査妨害にあたるという意見と、ふたつに分かれてるというところで終わってたんですね。報道ではそこに焦点を当てられていたんですが、実際はコミー長官はそれ以外にたくさん話してるんです。

それはロシアゲートに関して話している。ロシアゲートの出発点になってるのは、『ニューヨーク・タイムズ』の今年の2月の記事かな、その記事で民主党のサーバーをハッキングしたのは実はロシアで、それがどういうグループで、そのグループがトランプとコネクションがあるということが具体的な事実として出ていた。コミー長官は、あれは本当に事実かと聞かれているんです。そうしたらコミー長官は、ほとんど事実ではないと言った。ロシアゲートの出発点だった記事そのものを否定した。私はあれが事実ではないと知っている。どういう状況かはわかっていたが、それをFBI長官としてプレス側に言うことはできないんだと。でも、あれは事実ではないと言った(笑)。それでトランプ側は、おおっ、やったぞ!となった。

西塚 じゃあ、もう語るに落ちるというか、むしろ民主党がヤバくなるんじゃないですか?

ヤス そうなんですよ。それで今のトランプ側は、鬼の首を取ったように騒いでたんです。

西塚 決定的と言ってもいいですね。

ヤス その直後に、今度はもっとびっくりするような情報があった。それは、NSAの元契約職員でハンドルネームが“リアリティ・ウィナー”という25歳の女性の記事です。グレン・グリーンウォルドというジャーナリストがいるんですが、この人はスノーデンがコンタクトした『ガーディアン』の記者なんです。スノーデンの証言は2013年に、彼のインタビューからはじまったんですね。弁護士の資格も持っている極めて高名な調査ジャーナリストです。

この人がスノーデンのいわゆるスポークスマンとなって情報を流して、スノーデンがロシアに亡命するくらいまで面倒を見ていた。かなり手厚い保護を与えた人ですね。グリーンウォルドは2014年に『ガーディアン』を退社して、ほかの優秀な調査ジャーナリストと集まって『The Intercept』というオンライン新聞を立ち上げた。僕もよく読みますが、徹底した取材に基づくいいい記事を書いています。

そこが最近、ちょっとびっくりするようなスクープを出した。さっき言ったリアリティ・ウィナーという25歳の女性が、NSAの内部文書をリークしたんです。大統領選挙のときに、電子投票用のソフトウェアがあるじゃないですか。その電子投票マシーンを作ってる会社があるんです。

西塚 日本で言えば、『ムサシ』みたいなものですね。

ヤス そうです。その会社が電子投票の票の取りまとめをやってる。そこにロシア軍の組織がハッキングしていた。アメリカの大統領選挙の投票報道がどのようになってるか、解析してたらしいんですね。それが詳しく書いてある文書をプリントアウトして、グリーンウォルドのインターセプトに送った。でもそこには、どのプリンターからプリントアウトされたかわかる認識番号が書かれていた。その結果、情報のソースとなったリアリティ・ウィナーという女性が逮捕された。これが大騒ぎになったんですよ。やっぱりロシアがやってたのか!ということになった。日本の『videonews.com』でも、やっぱりロシアか!と言って、いきり立っていた(笑)。

西塚 でも、それはちょっと早計ですね。実際にロシア軍がハッキングしてたのかもしれないけど、選挙報道の調査みたいなことであれば、トランプに有利なように選挙を操作したとか何とかという話とは別ですね。それに大国同士、おそらく似たようなことはアメリカもロシアに対して行なってるんじゃないですか。

ヤス ここでも見方が分かれてて、ひとつは、これでロシアのハッキングが証明されたということです。でも、オルトライトやアレックス・ジョーンズなどのいろいろなサイトでは、ちょっと待てと。ヘンだと思わないかと。なぜ、プリンターの認識番号が出ている文書をわざわざインターセプトが出したのか。普通は、情報ソースは命がけで秘匿する。グリーンウォルドのスノーデンのときの扱い方を見てみろと。

西塚 なるほど。

ヤス それが何でこのときだけ、これだけガードが甘くて、捕まえてくださいみたいなことをやるのか。おかしいと思わないかと言うわけです。だから、そのまま受け取るわけにはいかない。さらに、ロシアの軍事組織がやったということですが、ハッキングの手順を見ると、はっきり言って素人でもできるようなハッキングだと。どんなハッカーでも、これくらいのことはできるだろうというレベルの低さだ。それがロシアであるという具体的な証拠は何なのか。

西塚 ロシアだと特定できる何かがあったんでしょうね。

ヤス 彼らはそう言うわけですね。文書にはそうあると。ロシアのほうは、ロシア政府はやってないと言うわけです。ただ、ロシアを中心に活動しているハッカー集団はたくさんいるので、彼らが何をやっているかはわれわれは知らないとも言っている。

西塚 どこの国にも、民間のわけのわからない連中はいっぱいいますから。

ヤス 逆に今問題になっているのは、ウィキリークスでアメリカが他国の選挙システムをどのようにハッキングしてたかということが流れてるんです。たとえば、NSAはパキスタンの選挙の票を操作していた。実際にアメリカにとって都合のいい候補を通すために評価したり、票そのものを上乗せしていた。だから、アメリカだってほかの国に対してそこまでやってるのに、今回のことをそれと比べてみろと。たとえロシアの情報機関がハッキングしたとしても、データを見ただけで、何も操作してないではないかと言うわけです。

西塚 そのへんに関して、ウィキリークスは何も言わないんですか。

ヤス ウィキリークスは、リアリティ・ウィナーの行動は正しい。すぐ釈放せよという声明を出した。

西塚 支持すると。

ヤス 実際、状況を見てもトランプとロシアが共謀してたという証拠にはならない。その後、このリアリティ・ウィナーのニュースは急激にトーンダウンしはじめた(笑)。

西塚 そうでしょうね。根拠というか、その女性の動機が…

ヤス リアリティ・ウィナーはバーニー・サンダースの支持者だったんです。民主党の最左派に属していた。

西塚 セス・リッチもそうでしたね。

ヤス セス・リッチもそう。

西塚 セス・リッチはサンダース支持者なんだけども、民主党がサンダースに不利な情報を流したり、要するに妨害していることに頭にきたということでした。

ヤス 今回、リアリティ・ウィナーもトランプをつぶしたかった。ロシアと共謀してる証拠みたいなもの、自分のレベルでもトランプを捕まえられる情報があるなら流すという意図があった、ということらしいんですね。でも、結局これでは弱いということで急にトーンダウンしはじめて、論点が今は違う方向へ移った。どういうことかと言うと、スノーデンのときもそうだし、NSAからの内部告発者がずっと出続けてる。NSAは何をやってるんだという話になってきたんです(笑)。

西塚 母体が責められはじめた。お前ら、脇が甘すぎるぞということですね。

ヤス 何をやってるんだと。そういう流れのもとで今日ですね、上院でセッションズ司法長官の公聴会があった。そこで、トランプ陣営とロシアとの共謀はあったのかと聞かれて、セッションズ長官は、大ウソだと。まったくない。すべて、とんでもないでっちあげだと言った。今はだから、むしろトランプ陣営のほうに風向きが変わってきたわけです。

さっき言った『videonews.com』でも、リアリティ・ウィナーの情報が流れたときには、神保(哲生)さんはインターセプトのニュースはすぐに削除されるかもしれないから全部録っておいたと言うんですが、そんなに重要なものじゃない(笑)。

西塚 最近はちょっと見てないんですが、『videonews.com』でもそんなに浮足立つということは、やはりトランプはとんでもないヤツだという認識があるわけですね。

ヤス そう。

西塚 でももともとは、トランプが出てきたら面白いんじゃないかという話でした。

ヤス 大統領になるという可能性がないときでしょう。

西塚 それでも、いっそのこと大統領になったほうがいいというくらいの勢いだったと思います。そうなれば、今までの既存のエスタブリッシュメントのグローバルスタンダードをぶち壊して、何かしらの展望が見えてくるんじゃないかという意味で、宮台(真司)さんなんかはもうトランプが出てきてほしいといったようなノリだったと思います。僕もそう思いましたが。

ヤス でも、彼は世間の雰囲気によってけっこう変わるところがあるから(笑)。あと、神保さんとの温度差もあるように見えます。神保さんは、まさかトランプが、という感じだった。彼が言ってたのは、今でもそうですが、トランプは最終的に大統領になることを目標にしてないだろうと。あれは売名行為で、要するに自分自身の名前のついたテレビネットワークを作りたいだけだろうと。それが目的なんだと。

西塚 商売人だと、基本的には。

ヤス だから、とんでもないものが大統領になってしまったというふうに言うわけです。今でもそうだと思いますよ。

西塚 あの方はアメリカにも長くいたそうですし、皮膚感覚としてアメリカのことがわかってるんじゃないですか。皮膚感覚って大事ですよね、アメリカ人とはこういうものだという…

ヤス ただ、どのアメリカかなんですよ。オルトライトのようなアメリカなのか。それは彼にとっては、皮膚感覚として受け入れられないアメリカだと思いますよ。

西塚 そうですね。だから、違うだろう!ということでしょう。むしろ、やめてほしいわけです。ひょっとしたら、宮台さんはトランプのほうが面白いんじゃないかくらい思ってるかもしれない。

ヤス ただ思うのは、全然ジャーナリストでも何でもない僕も、インターセプトの記事を読んでると違和感を覚えるんですよ。普通は掲載しないでしょう、もらった文書をそのまま。

西塚 これ見よがしに…ニュースソースの内部告発者は守るべきだし、あり得ないですね。

ヤス 案の定、逮捕された。

加計学園問題に見る内部告発の日本的事情

西塚 ちょっとずれるようですが、加計学園ですね。いきなり日本の話ですが、例の前川(善平・前)文科事務次官ですか、あの話も一応、民進党の一部からは内部告発者ということでもてはやされているようですが、あれはどう思われますか?

ヤス まあ、とんでもないですよね。

西塚 僕もとんでもないと思いますが、さきほどの内部告発とはちょっと違う気がします。文科省とその一官僚と、内閣府つまり安倍の意向との食い違いによる腹いせにすぎない、としか見えないのですが。

ヤス 僕はちょっと見方が違ってて、安倍政権の手法というのがあると思うんですね。よく安倍政権がアメリカとの価値観を共有してると言いますが、安倍政権ほどアメリカとの価値観を共有してないものはない。アメリカというのは一応、価値観としての民主主義があるわけです。その民主主義的な制度に則って動いている部分がある。

たとえば今回、数カ月前の話ですが、大統領令でイスラム圏7カ国くらいの入国が禁止された。でも、その大統領令を地方裁判所が全部覆して、無効化していくわけです。民主主義の重要な側面として三権分立がありますね。司法・立法・行政の分立がある。そして司法というものが行政に対してものすごく強いので、行きすぎた大統領令に対してストッパーになったということです。だから、やはり民主主義の原則のひとつが生きているということの現われだと思うんです。

そういう意味で考えると、日本は民主主義の国ではない。少なくともアメリカのような民主主義の価値観はない。どういうことかと言うと、要するに国家を形成するのは“個”ではない。国民ではないと。神聖な国家という実体があって、これは八百万の神が創ったのか何だかよくわからないけどね、そういう国家に国民を埋め込むのが自分たちの役割なのだと。

西塚 そんなこと思ってるんですかね。

ヤス そうしない限り、国の統治はできないと思っているんです。

西塚 本当にそう思ってるのかな…

ヤス おそらく、そう。そこまで日本国民はバカだと思っている。そういう統治構造に埋め込むことによってね、自分たちが統治者でずっといられる。われわれのような人間が統治者じゃないと国の統合は保てないということを、まあ自分たちが統治者でいることへのひとつの正当性にしているわけです。それが一番露骨に安倍政権に出ているわけです。だから極端に権威主義的になる。俺がこう言ったら、やれと。それに反発すると叩くわけです。

今までも、官僚の人事権は握るは、マスコミに対していろいろと露骨な圧力はかけるは、国連人権理事会の特別報告者が、いわゆる共謀罪には人権を守るような条項がないので不適切であると批判をすると、真っ向からカーッとなって反応する。極めて権威主義的であるわけです。

今、文科省から出てきているのは、その権威主義が引き起こしてきた負の遺産ですね。かなりの数の人間、官僚も政治家も左遷されてますから。安倍政権に睨まれた人間は圧力をくらって、どんどんどんどん外部へと追いやられる。だから、すさまじい怨みだと思います。その怨みのバックラッシュに今、遭ってるわけですね。

西塚 なるほど。前川事務次官もその怨みの腹いせで内部告発みたいなことをやった。

ヤス そうですね。基本的にあるのは怨みでしょう。ただ、その怨みを合理化するための理屈はたくさんあるわけですよ。政治の独走に対して官僚はやはり抵抗すべきだとか。今回の加計学園問題を見ててもヘンじゃないですか。“総理の意向”を証明するような文書があると前川事務次官が言った。それに対して菅官房長官は、調査をしたがそういう文書はないと言った。文部科学大臣も言ってるわけです。そうしたら、もっと下っ端のレベルの官僚から、いや、あったよと出てくるわけですね。彼らは何者なのか。反旗を翻しているわけじゃないですか。それはやっぱり怨みを持ってるということですね。

西塚 今回の直接の動機としては、今年の初めに天下り問題で文科省が集中攻撃されたことへのある種の腹いせみたいなことがありますね。ヤスさんも前におっしゃってましたが、官僚は天下り先を作ったり、確保したりすることが重要な仕事みたいですからね。

ヤス うんうん。

西塚 そうした中で、今回は規制緩和という名の下で安倍が何か“お友だちごっこ”をやろうとして、加計学園の獣医学部ですか、文科省とできるできないでぶつかっていた。それで前川事務次官のスキャンダルや人格攻撃もあって、結果的に官邸と文科省の戦いになった。その一環としての腹いせですね。でも、そういう個人的なものも含めて、今回は安倍の権威主義的なものに対する大きな反動として返ってきている、という構図があるわけですね。

ヤス
 そうです。今までは、自民党の官僚の操縦術というのがあったと思うんです。一方的に官僚に操縦されるだけではなくて、官僚も政治家を育てるし、官僚も操縦されたという構造があった。でも、今までの自民党の官僚操縦術はアメとムチというより、アメだったんですよ、やっぱり。これだけやればこれだけやるぞという形で、よほどの行きすぎがない限り、ムチは使用しなかった。だから、怨みが溜まりにくい構造だったんだと思います。アメで誘導していく。それが今回はムチなんです。露骨にムチなんですよ。

西塚 まだ自民党に派閥がいくつもあったときは、アメとムチを使った関係性が機能していて、ちょっと今回は泣いてくれ、みたいなこともあったんでしょう。それが今はもう…これはヤスさんがおっしゃったように、安倍がわれわれが統治しなければ日本はダメになるからとか、そういう部分が本当に動機になってるんでしょうか。

ヤス やはり国体といったもの。国家の形に対する認識が根本的に違うと思いますよ。

西塚 そうなのか…安倍首相にそれがあるとは僕には思えないんですね。国体でもいいですが、漢字を読み間違えることはともかく、もうゴリゴリの国学院の教授みたいな、そのへんにも造形が深くて教養もあるようなオタクっぽい首相ならともかく、そうではないとしたら、やはりおじいさんの幻影というか…何でしょうね。

ヤス もっと言うと、能力がないから、そうなんだと思いますね。能力がないということは、コンプレックスが強いわけです。

西塚 以前の『おやすぴ』でも話が出ましたが、周りにたくさん優秀な人がいますからね。

ヤス 自分は成蹊大学で優秀でも何でもない。周りにものすごく優秀な人間を見せつけられるわけですよ。

西塚 それは学歴とか、キャリアの話ですね。

ヤス いえいえ、実際に優秀だと思う。仕事とかね。自分では敵わないくらい優秀だと。それで、おじいさんからの使命を受けたにしろね、能力がない自分がやっていかなくてはならない。そうすると、そのような自分を正統化するためには、何かの前提が必要になってくるんです。自分のプライドの柱となるようなものが、どうしても必要になってくる。そうしたときに、自分はこの国の形をまともな方向に戻すんだと。

むしろね、日本の歴史とかイデオロギーを詳しく知ってる歴史家のレベルになると、たとえば国民の上にいわゆる神聖ローマ帝国のように、国家の神聖性を装置として作り出していくこと。初期の明治政府が作り出したような、政治の統治構造という装置がよく見えるわけですよ。美濃部達吉のいわゆる「天皇機関説」みたいなものも出てきて、天皇というのは装置なんだということになってくる。それがよく見えるわけです。それが見えないんですね。見えないから、スピリチュアリズムにいくわけだし、国家の神聖性の原点となっている神そのものにつながろうとするわけだから。

西塚 そうなのか…われわれは何という首相を担いでしまったのか、という気がしますね。

ヤス だと思う。言ってみれば、やっぱり政治家の劣化ですね。劣化だし、行き着くところは戦後の処理、敗戦の処理を間違ったということだと思う。戦後は軍に関わる部分は全部排除されたけど、戦前の行政官僚はそのまま残るわけですね。政治家もそのまま残るわけです。ということは、天皇制国家の既得権益層がそのまま残って統治するわけです。それが現代まで生き残っている。そしてそのメンタリティを延々と受け継ぐような、二世三世議員の分厚い層ができてしまったということだと思いますね。だから僕は、ヤバいと思う。

西塚 ヤバいと思いますね。すみません、僕が日本に引きつけてしまったんですが、さきほどトランプのいろいろな話が出ましたが、とりあえず内部リークということで言えば、今のトランプ問題に限らず、ウィキリークスにはじまった内部告発、ひょっとしたら世界的にもイデオロギー化するんじゃないかという、内部リークというテーマがひとつありますね。それが日本の場合、いかに矮小化されるか、卑近なことになってしまうかという例として出したかったんです。個人的なコンプレックスだったり、ルサンチマンみたいなもの、あるいは構造的な官僚機構の話だったりということになってしまう。そうすると、そこにはある種の断絶があって、ちょっと違う話になってしまいますね。アメリカで今起こってる問題と日本の内部リークの問題というのは。

でも、僕はここで面白いなと思うのは、ジュリアン・アサンジやスノーデンの内部告発というものが持つ力ですね。もちろん、インターネットというのが大きいんでしょうが、ヤスさんはどう思われますか?

良心にしたがって内部告発するミレニアム世代の出現!

ヤス 内部告発のメカニズムを作ったのはウィキリークスだし、スノーデンもそう。セス・リッチもそうだし、内部告発者がずっとつながるわけです。先のNSAのリアリティ・ウィナーズの刑務所での様子が、よく独立系メディアで報道されるんですが、彼女はえらい元気なんですね。良心にしたがって私はやったぞ!という感じなんです。

西塚
 若いし、血気も盛んだろうから(笑)。

ヤス それで今ね、元NSAのトップ、国家情報長官だったジェームズ・クラッパーが何と言ってるかというと、アメリカにいるミレニアム世代は本当にヤバいんだと。使命感でしか動かないんだ!と言うのね。

西塚  若いのに使命感…

ヤス もう周囲の状況ではなくてね、あいつらは正しいと思ったら使命感だけで動くんだと。セス・リッチだってそうだし。

西塚 それはどう思われますか。しがらみとか人間関係とかそういうことではなく、何か原理主義的というか、イデオロギー化しやすいというか…

ヤス 彼らの場合は、まだイデオロギーまでいってないと思う。

西塚 正義感ですか。

ヤス 正義感。普通の人間が日常生活で普通に持っている正義感ですね。

西塚 それは面白いテーマですね。

ヤス スノーデンは、NSAのやってることは間違いだと言ってるわけですよ。アメリカの憲法の精神に反するんだと。基本的な人権を侵している。NSAはあらゆる人間を監視対象にしているわけですから。テロリストと疑われる人間を監視対象におくことは合法的だし、よくわかる。でも、すべてのアメリカ人を対象にすることは明らかに人権侵害であると。そういうふうに、アメリカの憲法の精神に反するという一点を信念に、2000万円を超える年収を捨てて、内部告発者になるというリスクを冒す。そういうメンタリティなんですね。

今回のリアリティ・ウィナーもそうです。彼女はアメリカ空軍に6年間いた人で、アフガニスタンのパシュトゥーン語をはじめ、数カ国語を話せる人ですね。だから、NSAにとっても極めて貴重な存在だった。そういう人が、たとえばアメリカ憲法の精神に反しているという、ある意味で“青臭い”と言えば青臭い正義感のような、自分の日常生活そのものとは関わらないような原理に基づいて批判すると。これが言ってみれば、ミレニアム世代のメンタリティということです。

だから前国家情報長官のクラッパーが、とんでもない!と言うわけね。周りの状況を無視して、自分の良心だけで動く者はいかに怖いかということを言う(笑)。

西塚 それも極端な意見ですね。むしろ、そういうミレニアムのメンタリティがもっと上層部にも欲しいくらいです(笑)。それでバランスをとればいいじゃないですか。

ヤス 情報長官が言うには、われわれの世代というのは、善悪を無視してまで国家に忠誠を尽くすということが前提になっている。

国家 それは古いですよ、個人的には。

ヤス すべてを捧げて国家のために尽くすことが、最終的には善に通じるというのがわれわれの感覚だと。彼らはそれを共有してないと言う。それほど怖いものはないと。

西塚 なるほど。善悪というものを基本におくと、そのつど変わったりするわけだから、僕は逆にそれが怖い気がしますね。

ヤス セス・リッチもそうですね。サンダースを勝たせたいというだけではなくて、善悪の基準から見ると、クリントンはあまりにもとんでもないことをやっていると。今回のリアリティ・ウィナーもね、自分の良心にしたがって行動をする。スノーデンもそうだし、ジュリアン・アサンジもそうですね。

西塚 だから、僕は善悪ではなくて、ヤスさんが先ほどおっしゃった良心ですね。そちらのほうがわかりやすい。その良心というのも、人によって違うという言い方があるかもしれないけど、善悪に比べると普遍的なもののような気がします。善悪と言うと、そのつど変わってくるもののように思います。じゃあ何が良心かと言えば、それは大問題ですが、そこは詰めていかなければならない。善悪で議論していくと、これはもっと埒が明かないでしょう。

ヤス それはおっしゃるとおりであって、まさに良心なんです。良心にしたがって彼らは行動する。たとえばスノーデンのように、良心にしたがって行動したことで彼はヒーローになるわけです。

西塚 そうですね。そもそも僕もジュリアン・アサンジはきらいではありません。

ヤス おそらくスノーデンのヒーローはジュリアン・アサンジだったろうし、セス・リッチもスノーデンをヒーローとして内部告発をする。今回のリアリティ・ウィナーもそうでしょう。要するに、自分の良心に恥じない行動をとるということ。良心をすべてのものに優先させる。国家よりも良心のほうが重要だということですね。

僕が思うに、ジュリアン・アサンジの出現はすごかった。言ってみれば、ひとつの人間の人格のロールモデルになるわけです。自分が見習うべき理想的な人格のスタイルになる。その人格がモデルになると、そのモデルを追い求める人たちの系列ができてきます。そうすると、国家でもない、民族でもない、イデオロギーでもない、自分の良心にだけしたがって行動するという、すべてのものに良心を優先させるという行動形式ができ上がる。そのメンタリティが、ある世代においては一般的になるということですよ。おそらく、それが情報リークを止まらなくさせるという大きなメカニズムのひとつだろうと思います。

だから、インターネットが発達したからとか、SNSが拡大したとか、そういうテクノロジーの問題ではなくて、人間側の問題として、そういう良心のもとで行動するといったメンタリティが、ある世代を中心に一般化してきてるということですね。

西塚 それはたとえば、昔からいろいろな国がありますが、そこで良心にしたがって戦ってきた人たち、その時代の権力構造のシステムに対してとか、もっと小さい部族社会レベルでもいいんですが、そういう人々は必ず出てきますね。5%くらいの人たちと言われてるようですが、その人たちがやってきたことはわりと記録に残ってます。僕なりのレベルで見ても、そういう人たちにはある種の共通したものがあるように思います。簡単に言えば、良心です。

その良心とは何かと言ったときに、これを読めばこれが良心だとわかるマニュアルがあるわけではない。でも、たとえば宗教にはそれに近いものがあって、そういうものを獲得するためのツールとして、あるいは考える場として、考える人たちがコミュニケーションできる場としてあったように思います。それでも、これからはもうちょっと違う形でそういう場を形成していくことができるのではないか。

個人的には、この『おやすぴ』も含めて、どんどんそういう場を追究していきたいと思いますが、これはそれなりにヘビーなテーマも出てきます。『おやすぴ』では、時事問題から入って毎回、ヤスさんにお話をうかがうという形で進めているわけですが、本題に戻ると、先ほどの良心は、“指針”みたいなことでもいいのかなと思うのですが、そのへんはいかがですか?

ヤス いや、違うと思う。“違和感”ですね。

西塚 ああ、むしろ違和感。違和感というのは、何かがあっての違和感ですが、その感覚のほうを優先させる。それは興味深いですね。

ヤス たとえばね、どの文化でも基本的な常識というのは、だいたい共通してる場合が多いんです。人にウソを言わないとか、約束を守るとか…

西塚 いきなり暴力を振るわないとか。

ヤス 他人に対してはできるだけ優しくするとか、やはりどの文化でも普遍的であるような原理原則みたいなものがある。

西塚 人間関係を取り結ぶ場合に、最低限守らなければならないルールみたいなものですね。

ヤス そう言ってもいいですが、客観的なルールではなくて、人間の持ってる身体的な違和感として出てくるものだと思う。

西塚 それはけっこう深い話になってきますね。今、僕が言ったようなことではなくて、人間である以上、当たり前のこととして出てくるような感覚ですね。

ヤス そうです。極端に言えば、われわれの脳の進化のスタイルとしてビルトインされている。おそらく、そういうタイプのものだと思います。

西塚 なるほど。

ヤス だから、もしそういうものに対して違反した場合は、身体的にすごく違和感を覚える。違和感が残ると、それがさもわるいことではないかのように合理化しようとする欲求が出てくるわけです。たとえば人を裏切ったと。とんでもないやり方で人を貶めて、それで自分は巨万の富を築いた。そうすると、そのような自分自身の生き方というものを、それでも俺は正しかったんだと合理化するための何かの理屈が必要になってくる。その理屈を必死に探し求める。

面白いんですが、エドガー・ケイシーっているじゃないですか。エドガー・ケイシーのクライアントがどういう人たちだったかというのが最近わかってきて、当時のメロン財閥の大物であるとか、えらい金持ちが多いんですね。どうもヘンリー・フォード自身もそうだったようだし、カーネギー財団のカーネギーもそうです。

彼らが何を語ってたかというと、すごい良心の呵責があると。労働者を安くボロクソのように扱ってのし上がってきたので、そういう自分自身の生き方に対する恥の感覚がすごくある。それを解消するために通っていたという人たちが多い。実際、そのためにフィランスロピーというものがあるんですね。寄付をするという。

西塚 キリスト教社会では昔からけっこうありますね。

ヤス そういう善意でやってるんじゃなくて、自分の悪意、自分はとんでもないことをやってるわけだから。

西塚 そうか、免罪符のようなものですね。

ヤス 免罪符です。

西塚 でも、もうカーネギーもメロンも古い人たちになりましたが、まだそういう良心があるだけいいとも言えますね。今はちょっと違うんじゃないでしょうか。

ヤス いや、違っている。ただ、本人が意識しているかしていないかに関わらず、必ず正当化する論理は求めます。だから、正当化する論理がなくてね、俺はとんでもない人間だけど楽しいゼと、本当に生き続けられるのかということですよ。

西塚 生き続けている連中が、けっこう多いような気がするんですけども…

ヤス それもあるかもしれない。ただね、やっぱり実際に話してみると、おそらく違うと思うのね。必ずどこかで正当化の論理を求めている。

西塚 本来は、普通に生きてれば正当化する必要がないわけだから、俺はこのままだよでいいはずなんだけれども、正当化するということは、何かうしろめたいことや良心の呵責があるということですね。

ヤス そうそう。

西塚 それは、人間なら必ずあるということですか。

ヤス そうです。たとえばアメリカの軍人でね、イラクに行って虐殺をたくさんしてきたという連中がいるわけですよ。日本の軍人もそうだけどね。彼らが軍とつながってる限りは、軍はそれを正当化するための理屈をたくさん提供してるわけです。お前はアメリカという国家のために尽くした愛国者であるとか。もし、お前がああいうことをしなかったら、サダム・フセインが大量破壊兵器を開発したかもしれないんだから、しょうがなかったんだとかね。組織に所属すると、あらゆる自分の悪行を正当化するための理屈を与えてくれる。NSAもそうだと思うけれども。それで本当に人間が心の底から満足できるのか。

西塚 それはすごく深いテーマで、またあらためて取り上げたいと思います。僕はそういう良心の呵責がないような人間が増えつつあるのではいかという疑問も持ってるものですから…

ヤス いや、いるかもしれないですよ。

西塚 ある種、機械のような人間。アンドロイドだったらおそらく良心の呵責はないだろうとか、あるいはアンドロイドだろうが何だろうが良心の呵責があるとしたら、それはSFの世界だと言われそうですが、実際はAI時代に入ってるわけですから、実は現実問題としてあるわけです。いずれにしましても、これはあらためてやりたいと思いますので、今回はおいときます。

でも、機械みたいな人間だったら平気で人間を殺すし、良心の呵責もないんだろうというふうにですね、最近のいろいろな犯罪や事件を見ていると、そういう人間が増えているような気がしないでもない。でも、実際は詳しい内容は知らないわけだから、そういう印象を受けるということに留めておきますが…

すみません、ちょっと脱線しましたが、トランプに絡んだ内部告発の話で、アメリカと日本ではちょっと事情が違うということはわかりました。その後の新しい情報としてはどんなことがありますか?

(後半に続く)

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