今日も東京は暑かった。
というか日本全国猛暑だったのだろうが、
これは平年並みなのか?

最近、そういうことに疎くなっているからよくわからないが、
日本はすでに亜熱帯になったとはもうずいぶん前から言われている、たしか。
もはや私らの世代が学校で習っていたような温帯ではないんだな、日本は。

とは言え、この狭い事務所はかなり古いマンションだが一応鉄筋なので、
クーラーを点けると24度くらいの設定でも意外と冷える。ヘタすりゃ寒い。
だから、事務所にいるぶんには全然暑くないのだが、
午前中に近所のベローチェにコーヒーを買いに行ったときに、
こりゃ今日も暑いわと思ったのだ。

そう言えば、
最近でも夏になると怪談話なぞをテレビなんかで特集するのだろうか。

芸能人たちが集まって、地方ロケなどで体験した話だとか言って、
それぞれが怖い話を披露するなんて番組はこの時期であれば定番のはずだ。
それこそ稲川淳二とか一龍斎貞水があっちこっちの番組に出てきて、
「生き人形」や「番町皿屋敷」の怪談話を語らなきゃ“夏”ではない。

日本の夏の“怪談”は、
キンチョーの蚊取り線香と同じくらいパーマネントなアイテムなのだ。
のはずだ。

私なんかは、この時期つまり学校の夏休みの時期になれば、
もう日本テレビの『お昼のワイドショー』の心霊コーナー、
「あなたの知らない世界」がはじまるのを毎年楽しみにしていた。

って、このネタはこのブログでもさんざん取り上げた気もするが、
好きだったんだからしょうがない。
中学1年生くらいだから、1973年だ。

この1973年という年はけっこう印象深い年だ。
私の年代で言えば、ちょうど中学生に上がる年だし、
何と言っても映画『エクソシスト』が公開された年でもあり、
翌年には『ノストラダムスの大予言』も公開され、
ユリ・ゲラーが来日する。

あの『エクソシスト』公開のときは、
日本でもちょっとしたパニックだった。
そのへんの体験談も以前にブログに書いた

ついでに言えば、『燃えよドラゴン』が公開されたのも1973年で、
この1973年という年から空前のオカルトブーム、
ブルース・リーブームが起こるのである。
ブルース・リーは関係ないかもしれないが。

漫画でも、つのだじろうの『うしろの百太郎』や、
『恐怖新聞』『亡霊学級』が1973年から連載され、
私にとっても少なからず衝撃的だった。

なぜって、それまでの怖い漫画は、
いわゆる定番の怪談『四谷怪談』や『番長皿屋敷』、
『雨月物語』や『耳なし芳一』などの焼き直しや、
それらの内容を現代ふうにアレンジしたもの、
あるいはオリジナル作品でも、
あくまでも“怖い話”が怖い話として展開されていく、
という内容だったのだが、

『うしろの百太郎』はもちろん“怖い話”だが、
主人公の後(うしろ)一太郎の父親が「後心霊研究所」を主宰しており、
次々と遭遇する怪現象の原因を究明していくという、
今までにないアプローチというか科学的な態度というか、
要するにただ“怖い話”だけで終わらせず、
そうした怪奇現象を“エクトプラズム”とか“テレパシー”など、
これまであまりなじみのない(少なくとも当時の小学生には)“専門用語”を登場させて、
いわゆる超常現象を何となく“学”として、
アカデミズムの中の一ジャンルのような形で扱っていたからだ。

これは当時の私としては非常に趣味が合ったのである。
そのときの自分のノートなど、ボロボロではあるがいまだに残してあり、
今では我家中で嘲笑の的になっているわけだが、それはまあいい…

あと、忘れちゃいけないのは楳図かずおの存在で、
これは『おろち』や『呪いの館』(いわゆる『赤んぼう少女』ね)、
『猫目小僧』『恐怖など、すでに小学生時代から別格の存在で、
同じく日野日出志の『蔵六の奇病』『地獄の子守唄』など、
ふたりは日本の怪奇漫画の双璧と言っていいだろう。

古株ではもちろん古賀新一もいるが、
私のような文学部系の頭というか感性の人間には、
ちょっと軽すぎた。

それにしても、先につらつら上げたタイトルはみな単行本で、
個別に作品をあげていけばキリがないが、
楳図かずおや日野日出志の作品は、
もし読んだことがない人がいれば、
一度読まれることをお勧めしたい。

というか、
このふたりくらいになれば私が言わずとも、
読んでる人はとっくの昔に読んでいるだろうし、
読んだことのない人は、
やはりこれらの作品を受けつけないタイプの人だと思うから、
今さら感があるが、一応ね。

でも、かなりクセはあるからな。たしかに。
それでも、そんじょそこらの“文学作品”とは“もの”が違うとだけは断言できる。

それにしても小学生時代は、
よくそんな漫画や話ばかりを見たり聞いたりしていたものだ。

小学4年生のとき、
同級生の女の子のお母さんがその手の話をたくさん知っていて、
よく学校が終わってからその子の家に遊びに行って(犬を2匹飼っていた)、
怖い話を聞くことが日課のようになっていた時期がある。

その子の家には少女漫画雑誌も取り揃えてあって(女の子だから)、
私は普通では手に取ることができないそれらの雑誌もよく読んだ。
なぜか必ずひとつやふたつは怖い話が掲載されていたのだ。
みな読み切りだったが、けっこう怖い話があって、
私は内容はよく覚えていないが、
いまだに怖かったなあということだけは覚えているものもある。

そのひとつに、たしか「ななちゃんの誕生日」だったと思うが、
そういうタイトルの漫画があって、でも検索しても出てこない。
まあ、ないか。もう45年くらい前のことなのだから。

その同級生の女の子のお母さんの話は、
そのお母さんの家族や親せきが絡んだ話が多かった気がする。
懐かしいなあ。

その子の家には、いつも仲のいい友人ひとりかふたりと一緒に行った。
それで犬の散歩をしたり、少女漫画雑誌の怖い話を読んだり、
そういえばいわゆる“おままごと”もやった気がする。

今、おままごとって言うのかしら。
若い連中は知ってるのかな。
知ってるよな。
まあいいや、説明するほどのものではないし。

とにかくそんなことをやりながら、
そこのお母さんが怖い話をしてくれるのを待つわけだ(毎回してくれるわけでもない)。

そのひとつにこんな話があった。

ある若い夫婦に子どもができた。
なかなかすぐには子どもができなかったので、
夫婦は大喜びで、近所の人たちも「よかったねえ」と喜んだ。
やがてその奥さんが臨月を迎え、
無事に出産をすませたらしいことが近所の人たちにも知れた。

母子ともども家に帰ってきたようなので、
近所の人たちは口々にお祝いを言いながら、
赤ちゃんをひと目見ようとその家に集まってきた。
奥さんはお礼を言いながらも、子どもの具合が今はよくないから、
今度にしてほしいと言った。

近所の人たちは帰って行ったが、それからも奥さんは、
みんなが家に訪ねて行っても何かしらの理由をつけて、
なかなか赤ちゃんを見せてくれない。
近所の人たちも不審に思いはじめたが、
無理強いすることもできないから、
そのうち見せてくれるだろうとあきらめた。

でも、その中のひとりの奥さんが、
ある日そっと隙をうかがって、
赤ちゃんを見ようと家に入り込んだ。
するとベビーベッドの中に、
かわいらしい赤ちゃんが毛布を掛けられて眠っていた。

「まあ、かわいいじゃないの!
何でこんなかわいい赤ちゃんを今まで見せてくれなかったのかしら…」
と、その奥さんはそっと赤ちゃんを抱き上げた。
そうしたら首から下がヘビで、とぐろを巻いていた…

……

ヒエェェーーー!と、
楳図かずおの漫画ばりに驚いている小学生の私たちに、
その同級生のお母さんは、
「これは本当にあった話なのよ。たしか四谷のほうのお家だったわね。
〇〇新聞にも小さなな記事だけど、載ったの」

そんな話を毎回聞いていたわけだが、
その家を出るときはもう夕方で、
あたりはうっすらと暗くなっている。
小学生の私たちは道々、
今聞いたばかりの話について語り合いながら家路についた。

思えば変な話がたくさんあった。

今の印象としては、
何か過去に読んだ文学作品のような記憶になっている。
夏目漱石の『夢十夜』(あの「こんな夢を見た」ではじまるやつだ。
黒澤明の遺作『夢』もそうだ)や、
内田百閒の『冥途』や『サラサーテの盤』『花火』、
それから柳田国男の『遠野物語』など、
そういった作品の記憶に近いと言えば近い。

やはり時代なのか、
それとも私自身の心の中にある暗さなのか、
いろいろと幼少期のトラウマが関係してるのか、
よくわからないが、
思い返す記憶としては明るいものではないな。

でも、こうして昔のことを思い出すのもたまにはいいだろう。
まだまだ夏本番はこれからだろうし、
私のそうした怪談話?も何も小学生時代に限ったことではない。
ちょっと真夏のスペシャルミニシリーズとして続けてみようかしらん。
って、そんなたいそうなものでもないし。

あと、今ふと思ったが、あのころにはまだ“ホラー”とか、
“オカルト”なんて言葉はなかったはずだ。

やはり1973年からだと思う。
先の『エクソシスト』にしたって、最初は“悪魔映画”と言っていた。
『少年マガジン』だったと思うが、映画の宣伝として、
楳図かずおが先行して『エクソシスト』を観覧し、
その概要を巻頭カラーで漫画にしていたのではなかったか。
そのキャッチがたしか、“悪魔映画がやってくる!”だった。

で、そのうち“オカルト”というジャンルが形成されていくのだ。

1973年って何かありそうだな。
いわゆるオイルショックもそうでしょ?
後づけかもしれんが。

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