だるまさんこちら向かんせ世の中は月雪花に酒と三味線…とまあ、こういきたいものです。

『酔っぱらいオヤジのSpiritual Meeting』vol.39 「世界のシフトチェンジ」

人気ブログ『ヤスの備忘録』でもおなじみ、
社会分析アナリストの高島康司氏をお招きして、

1 世界で今、起きていること
2 人間の新たなる「精神性」「意識」「思考」

について、飲みながら自由闊達に話すシリーズ。
基本的に毎週更新。

〇『酔っぱらいオヤジのSpiritual Meeting』第39回
「世界のシフトチェンジ」

ゲスト:高島康司氏
聞き手:西塚裕一(五目舎)
2016年3月27日 東京・中野にて収録

西塚 『酔っぱらいオヤジのSpiritual Meeting』の今日は39回になりました。さっきから飲んじゃって、いつもの流れできてますが、今日もヤスさんにおいでいただきした。よろしくお願いします。カンパーイ!

ヤス こちらこそ、どうもどうも、カンパーイ!

西塚 時事的なことをいつもお聞きしてますが、それも重要なのですが、僕は何か最近ちょっと世の中、というと大げさかもしれませんが、ものすごくその、マインドシフトじゃないですけど、漠然とした言い方ですが、何か空気が変わってきたという気がするんですね。

ヤス 僕も感じる。

3月に入って突然“流れ”が変わった!

西塚 あ、感じますか? その正体は何だろうと。今日は前半に軽くおうかがいしたいなと思うんです。僕の感じなんですけども…

ヤス いいですよ、話してください。

西塚 僕の感じでいうと、本当にバカみたいな話ですが、“未来は明るい”と思うんです。もともと僕自身がそういうタイプではあるんですが、根底に楽観主義があるのはともかく、ここにきて何というか、SFっぽくなるかもしれませんが、いわゆる支配側、国際金融資本的なもの、宇宙的なレプタリアンでも何でもいいんですが、そういうヤカラが仮にいるとしてもですね、もう疲れたのか何なのか、何か変わったという感じがしてしょうがないんですね。

それは小さい部分、たとえばテレビで芸能界の世界を見たりとか、電車の中の光景でも、それはいますよ、気に食わないヤツとか、何やってるんだろうというヤツはいっぱいいるんだけども、僕は今のところはこれは春のせいだろうと単純に思ってますが(笑)、だいたいこの季節は自分が生まれた季節ということもあってウキウキするので、それもあるだろうなと思いながらもですね、それとは違うものがあって、ああこれはいいことだなと。

あまり面倒くさい話をするつもりはないですが、あるラインが変わったんだと思うのです。自分のラインなのか、日本のラインなのかはわかりませんけども、明らかに何かが変わってきた。ヤスさんとお会いした2011年ぐらいに民主党の話をしましたね。熱海の講演会のときに。あれは分かれ目でしたねという話をして、鳩山(由紀夫)さんがあのままうまくやってれば、日本は地域分散型のまったく違う体制に移行した可能性が高かったはずですが、まあいろいろコケちゃってダメになった。そのあと管(直人)、野田(佳彦)とドツボにハマって、あげくの果てに安倍です。

それがまた今、一周回ったのか何なのか、違うラインが出てきたのかなと。いろいろ言いたいことは細かくありますが、今ヤスさんもちょっと変わってきたと思うとおっしゃったので、どんなところが変わってきたのか、ちょっとお聞きしたいのですが。

ヤス
 やっぱり人間の関心がね、ある特定の領域というか、それぞれ個人個人だと思うんですが、今までいろいろな方面に漠然とした関心があったのが、ある特定の方面、特定の領域にどんどんフォーカシングされてきたという感じがするんです

たとえば、僕の内部でどういう変化が起こってるかというと、いわゆるスピリチュアル系ってあるじゃないですか。お花畑系のスピリチュアリズムに関してもね、ある意味での関心はあったんです。信じてるわけでは全然ないんだけども、なぜ彼らはこういうことを言うのか、その根拠を究明してみたいという欲望があったんですね。

なぜかというと、たとえば予言者でもいいし、心霊研究家でも何でもいいんですが、いわゆる超自然的な感性の持ち主たちというのは明らかにいるわけで、そういう人たちは僕が持っている普通の日常的な感性とは全然違ったものを感じてるわけです。彼らが何を感じてるのか究明してみたいという強い関心があった。それが、そういうスピリチュアル界みたいなものに自分を関わらしめていた、ひとつの動機にはなってると思うんですね。

自分の内部で何が起こってるかというと、そのようなものに対する関心がほとんどなくなったということなんです。

西塚 いつぐらいからですか?

ヤス 去年の後半くらいからですね。

西塚 わりと最近ですね。

ヤス 最近ですね。急激になくなってきた。当然、多くの友人がその分野にいますので、人間関係そのものは非常に楽しんでいて、貴重な人間関係なんですけど、分野に対する関心というのは、ほとんどなくなってきたという感じです。それは、自分の中で何かの決着がついたということまでは言えない。そこまでは言えないけど、どうもスピリチュアル系のかなりの部分が、実は強度の思い込みによってでき上がっている領域だと、自分が強く実感したということがあります。

そうすると、自分の関心がどんどんリアルな政治経済、リアルな社会情勢の変化の奥底でね、一番大きな意識の変化がどのような方向に向かっているのかというところに、グーッとフォーカスされてきたという感じです。

僕の身の周り、たとえば勉強会にくるお客さんとか、飲み会でよく会う人たちというのは、みんなある意味で同じようなフォーカシングの段階を迎えている。逆にそうではなくて、本格的なスピリチュアリズムに入っていくというフォーカシングのあり方もあるんですよ。その意味では、ひとりひとりの持ってるフォーカスがどんどん先鋭化することによって、ガバっと分かれてきたという感じですね

西塚 それはわかります。

ヤス 非常に大きく人間の集団が分かれてきたという感じがします。

西塚 お話はまったくそのとおりだと思います。僕も同じように感じる部分があります。ヤスさんとのこのシリーズでも何度もテーマになっているポイントとして、現実は自分が創っているということがありますね。そうなんだけども、たいていはそれほど自分に自信があるわけではないから、何かに依存してみたり、神頼みしたりするわけです。自分でやればいいだけなんだけども、自分の思い込み自体に根拠がないものだから、お墨付きがほしい。それで宗教にいったり、あるいは本を読んだりする。霊能者に聞くところまでいかなくても、確証を得たい。

そうじゃなくて、僕は武術をちょっと学んだことも大きいですが、やはり自分で何でもできるということなんですね。もう結論が先にある。わかってるんです。ただその確証がないということです。手ごたえというか。たとえば合気でいうと、手ごたえがあるうちはダメだと言われる。手ごたえがない状況とはどういうことかということなんですが、それにはやはりレベルがあって、あるレベルになると、普通の人には手ごたえがないことでも手ごたえがあるようにわかるわけです。何かがまた変わるんでしょう。

今のは比喩ですけれども、それと同じようなことが今、人間の意識に起きてきてるという気がする。僕がちょっと雰囲気が変わってきたというのは、ひょっとしたら、自分が向かっている未来像があるとすれば、そこに関わってる人たちとしか今、関わってないのかもしれないなという気がしないでもない。ある意味、それは当たり前ですね。同じような思いを持っている人たちばかりが増えてきて、そうじゃない人との関係性が薄くなれば、ああ、変わったなというふうに思う。

だから、単純にそういうことなのか、実際に何か別のことが変わったのか、僕はまだ判断できないですけれども、大雑把に言うとそんな感じです。

ヤス なるほどね。

西塚 もうひとつ加えると、ある飲み会があって、出版関係ですが、もう完全に終わったと思ったんです。

ヤス ほう、それは出版がダメだと?

西塚 少なくとも、今までの流れではダメだと。そんなことはわかっているんだけども、まだその延長でやろうという人はけっこういるんですね。それにくっついているマインドがあって、ちょっと耳を疑う発言もあったりする。同時にそこに入っていく若い子たちもいるわけです。大手の出版社の子たちとも話しましたが、その子たちはやっぱり若いですから、考え方にも柔軟性があって、既存のものでもこういう子たちが入れば変わっていくだろうなという希望も持ちます。でも、上司であるとか、OBの人たちは、ダメだこりゃって感じですね。いかりや長介じゃないですが。

もちろん、これは僕の傲慢かもしれません。でも、もうついていけない。仕事だから関わっていこうというレベルじゃないんです。もういっさい関わらないかもしれないという感じです。僕も中途半端なところがありましたが、これはいよいよ自分でやるしかないなという気を新たにしました。そういった意味で、今後進めていくことも、同じことをやるように見えても全然、心構えが違うわけです。

ヤス やっと腹が据わったという(笑)。

西塚 という言い方もできるかもしれないし、ある種、本当にダメなんだなあとわかったんですね。どこか期待してたのか、依存があったのかもしれません。仕事に限定した話ですけどね。ちょっとびっくりしました。

ヤス それは、やっぱり別れですよね。

西塚 別れですね。

ヤス はっきり言って、分断と別れが起こってると思いますよ。

西塚 一抹の悲しみがあるくらいの別れでした。この人たちとはもう付き合わないのかもしれないなという感じ。

ヤス 彼らは彼らで、僕の言葉で言うと、西塚さんとは違った領域にフォーカシングしていくわけですよ。それは西塚さんから見ると、これにフォーカシングするとヤバイだろというところにフォーカシングしていくわけです(笑)。

西塚 ヤバイというか、僕はできないという感じですね。そこに一抹の悲しみがあって、この対談の前にいろいろとお叱りも含めたアドバイスを受けたんですが…

ヤス いえいえ、叱ってない。

西塚 僕がそこにまだフォーカシングしてるように見えるわけですね、おそらく。興味はまだあります。現実に付き合いもあるし、ということ以上に何かがまだ僕を引っ張ってるのかもしれない。それとどう付き合い、どうビジネス化していくかというのは、僕の問題になっていくんですけれども。言い方が微妙ですけど、それを感じました。それでちょっと、ここのところ、わりと落ち込むってほどじゃないんだけども…

ヤス ちょっとダウン気味?

西塚 ダウンというか、しみじみ系ですね。

ヤス しみじみ酒を飲んでたと(笑)。

西塚 いえいえ、本当に飲んでないですが、なるほどなあと。みんな不安を持ちながらやってるんですね、顔つきから何から変わっちゃうんですからね。

ヤス なるほど。おそらく意識の変化というか、何となく空気の変化を感じるということでもあるわけです。社会全体のね。

西塚 違うラインといったらへんですが、安倍政権の流れを見てもそういう感じがしますね。

世界情勢にも大きな潮目の変化が!!

ヤス ボー・ポルニーという有名な証券アナリストのような人がいて、市場アナリストですね。アメリカで相当評価されてる。彼はチャート分析によって相場を予想するんですけど、ものすごくよく当たる。去年から見てると、けっこう的確に当たってるんです。どこで相場が下げて、どこで上がるか。僕自身、何か投資をしてるわけじゃないですが、彼の分析には興味がある。何を根拠に分析してるのかなというと、そのチャート分析なんです。

チャート分析の細かな結果は、彼の有料レポートを買わないとわからないんですが、この日ぐらいにこういうことになると、けっこう厳密に指定されてる。結論からいうと、今年の3月3日くらいまで、極めてピタピタ当たってたのね。去年の初めくらいから今年の3月の初めくらいまで、ピタピタとよく当たってた。

彼は3月の第一週で暴落すると言っていた。これまでピタピタ当たってたから、これは可能性としてはあるなというふうに僕は思っていた。

西塚 メルマガにも書かれてましたね。

ヤス メルマガにも書いた。それはボー・ポルニーのみならずですね、いろんなアナリストが同じようなことを言ってたんです。複数のアナリストが同じようなことを言うんだから、これはおそらくそうだろうというふうに思ってた、可能性として。それがですね、3月の初めぐらいから全部はずれはじめるんです。バカバカはずれはじめる。

それで、3月の初めくらいから状況がガラッと変わったんです。簡単にいうと、えらく落ち着きはじめた。2月の末までは、相場は不安定、ダウは1日で数百ドル乱高下する。日経平均は1日に数百円、千円近い割合で乱高下する。それからシリアはどうなるかわからない。サウジアラビアとイランの対立もどうなるかわからない。場合によっては戦争をはじめるかもしれない。ロシアと欧米の対立も全然先が見えないというように、大きな戦争に発展するような火種がたくさんある。

原油価格もどんどん下がって、20ドルを切るくらいの段階までいく。そうするとアメリカのシェールオイルバブルがつぶれる。シェールオイルの会社のローンいうのは、みんな金融商品となってバラまかれてますから、第2第3のリーマンショックになってもおかしくないと。

中国経済のスローダウンというのは、こちらの予想を超えたスローダウンで、人民元の切り下げを行なった場合、次の相場崩壊の引き金になるかもしれないという、ある意味サーフィンをやるくらいの不安定な状態だったんですね。

それがですね、2月の末を越えて、3月の初めにきたらピタッと全部収まった

西塚 それは、嵐の前の静けさですか?

ヤス かもしれない。かもしれないけれども、気持ち悪いくらい全部収まった。どういうふうに収まったかというと、シリアの和平合意が思った以上にうまくいってる。ロシアとかサウジアラビア、イランも含めて、いわゆる産油国が勝手に減産をはじめて、それがひとつの背景となって原油価格が30ドルから40ドルくらいまで上がってきた。それにしたがってシェールオイル企業が利益水準を回復しつつある。

それからシリア問題に関して、アメリカとロシアとの協調路線がはっきり出てきたとか、中国の経済も思ったほど悪くないという数字がどんどん出てきた。サウジアラビアとイランの対立の中にロシアが仲裁者として入ってきて、原油価格の交渉をやるという形で、イランとサウジアラビアを抱き込みはじめたという感じなんですね。

それで全体の状況がスーッと沈静化しはじめて、むしろ楽観ムードが漂いはじめている。今、凪の状態ですね。そんなふうに何か世の中の空気がガラッと変わった。そのように世の中の空気がガラッと変わったときに、自分の内面がどう連動して変わるのかなということにけっこう興味があってね。

西塚 この間のブリュッセルみたいなテロがありますね。それは国際的なニュースとして流れるから、不安を覚える人はおそらくたくさん出てくる。ああいうことがポツポツあることはある。でも、大きな方向としては、方向というか大きな波としては凪状態であると。

ヤス 凪状態なんです。言ってみれば、大きな状況としては凪状態。凪状態の中でああいうテロは当然起こるんだけども、テロはひとつの事件として、ある意味で孤立化するわけですね。極めて重大な悲劇的な事件なんだけどれども、そのテロ事件が思ってもみないようなものに連鎖して、もっと状況が不安定化するという方向へは作用しない。

西塚
 なるほど。連関が断ち切られたということですね。それ自体はでかい事件だけれども、単発の出来事になったと。

ヤス そうそう。そんな感じじゃないですかね、今。

西塚 そうかもしれません。

ヤス その中で、自分自身の内面がどう変化するかというと、2月の終わりくらいから、特に幸福感が強いんです。急激に幸福感が強くなった。

西塚 僕が言ったような、春だからじゃないですよね(笑)。

ヤス いや、春だからってことは関係ないですよ。僕はね、感情はいつも一定してるんです。ほとんど上下はないという人間で、落ち込むということもないんだけれども、カーッと盛り上がることもない。いつも一定してる。ただ、ピンポンダッシュばっかりやってるという感じですね(笑)。

西塚 高位安定型ですね。高いレベルで安定してるんですね、テンションとしては。

ヤス そうですね。そんな感じなんです。ただ、そういう変動がないにも関わらず、極めて幸福感が深い。

西塚 それは凪の状態との連動もあるんだろうけど、どのように分析されてるんですか?

ヤス いや、よくわからない。つくづく生きててよかったなあという感じ。

西塚 (笑)まさかとは思いますけども、歳とってきたからとかそういうことじゃないですよね?

ヤス そういうことかもしれない。歳はとってますよ。

西塚 もちろんとってますけどね、われわれ。でもまだ早いですよね、50代でそういう境地…

ヤス 前にね、BST(ブレインステートテクノロジー/脳最適化技術のひとつ)をやったときと同じような感じですね。深い幸福感が心の奥底からどんどん込み上げてくるような幸福感なんですよ。

西塚 僕はそこまでの幸福感じゃないかもしれませんけど、現実に目を転じればとんでもないんだけれども、やっぱり楽観的なんですね。

さきほどおっしゃったことは重要なポイントだと思いますが、世の中全部連動して、関連づけられて、ちょっとしたことが同時にどこかに響いていくというような気持ち悪さというか、怖さというものはない気がするんです。

ヤス
 そうなんですよ。おっしゃるとおりで。だから、今回のブリュッセルのテロもすごく大きな事件で、悲劇的ですが、これが何かの起点となって何かの出来事の連鎖が起こって、とんでもない方向にいくっていう感じのものではないですね。あれは孤立した事件だろうなと思います。

西塚
 そうなるとエノク予言ではないですが、87%くらい本当になるということですから…

ヤス 92%。

西塚 失礼しました。残り8%というのがですね、エノク予言自体が予言なのでわかりませんが、僕はあまりうがった言い方はしたくないのですが、それこそ2006年、2007年くらいからヤスさんが世の中にエノク予言を出されていって、知ってる人は知ってるんだけれども、いまだに知らない人もたくさんいる。それでも知らしめることによって、エノク予言のシナリオも徐々に変わっていくということがあると思います。エノク予言を知る人が増えることによって、ある意味ブラックスワンをなくしていくという。僕は実はそれはけっこうでかいと思っているんです。

僕はそこにメディアの役割があると思ってるぐらいなので、オオカミ少年じゃもちろん困るんだけども、でもオオカミ少年はもともとウソをつこうと思って言ってたから、ちょっと話が違いますが、ある程度ある検証のもとに訴えるということが必要だし、だからこそ表現の自由というものは絶対に保障されなければならない。

ヤス それはもうおっしゃるとおりだと思います。

西塚 それが僕は功を奏してきたという言い方もできるのかなと思うんです。

大きな“流れ”になる3つの支流とは?

ヤス そうかもしれない。あともうひとつ大きな変化というのは、この数年間、比較的最近ですよ、やっぱり新しいシステムを作らなくちゃいけないだろうという流れがですね、面白いところからはじまった。金融資本そのものの内部からはじまってきたということなんです。もうわれわれは無理だねと。だから新しい流れを作って、安定したシステムを再構築せねばならないだろうと。それが意外に急速に進んでる感じがします。

西塚
 ビットコインの話にもつながってきますか?

ヤス つながってきます。ただ一足飛びという流れではなくて、ある意味で合理的な流れなんです。

こういうことなんです。これから世の中で大きくなる流れ、大河となるような流れを形成する3つの支流みたいのができてきた。ひとつはマイナス金利なんです。詳しい経済の話はしませんが、マイナス金利になるとどうなるかというと、銀行の利益率が下がっていくわけですね。だから預金者から金利をとらねばならないというところまで追い込まれてくる。

たとえばヨーロッパであれば、マイナス金利をすでにやってるスイスとか、スウェーデンとか、そういうところまで追い込まれてる銀行が多いんです。おそらく日本では地方銀行を中心にしてね、やっぱり金利を預金者からとらざるを得ないというところまで追い込まれてくると思います。だから、銀行のサバイバルはかなり厳しい。

第2に人工知能。最近、アルファ碁というグーグル傘下のディープマインドが開発したソフトが話題になりました。それから人工知能が書いた小説が、星新一賞の第一次予選を通ったんですね。

西塚 アメリカのメディアなんかは、スポーツ記事とか、プレスリリースを見て書くような記事は人工知能が書いていると言いますね。

ヤス そうなんです。今回の人工知能の新しさは何かというと、ディープラーニングができること。直観知ですね。

西塚 それで言うと、例のマイクロソフトの人工知能のツイッターですが、みんながレスポンスするから、ディープラーニングで学んでいくわけですね、人工知能が。たぶん誰かが吹き込んだんでしょう、ヒトラーはすごいよと。そうしたらいきなり人工知能がヒトラーは正しかったと言い出して、お騒ぎになった(笑)。今は閉鎖されてるようですが。

ヤス
 人工知能の発達が、ある臨界点を迎えつつあるということなんですね。

西塚 カーツワイルの2045年問題ですね。

ヤス そうです。ディープラーニングができるようになってくると、それこそ人間並みの対話力ができてくるということです。

西塚 今、あちこちで言われはじめてますけれども、そのときには人間と機械の境界がわからなくなってくるという。

ヤス それが第2の流れだと思うんですね。第3の流れは何かというと、社会的インパクトという新しい金融システムです。金融工学者たちが、われわれが作り出した現代の金融資本主義のシステムはヤバいよねと。バブルで投資された巨大な資本がある。これを社会的底辺層に回して安定した収益を得ながら、それを先進国の経済発展の原動力にできないかとモデルを考える。それがけっこううまくいってる。

西塚 そう思います。今はこんなデフレですが、こんなことヤスさんに言うことじゃないけども、あえて言えば、日本の国家予算は特別会計じゃないですか、基本的に。いわゆるまともな予算は超えている。ものすごくあると思うわけです、備蓄が。今年はそれを発動せざるを得なくて、まあいろんなことをやるんじゃないかなと。

もちろん官僚、財務省あたりはやりたくないんだろうけど、もう四の五の言ってられないというような、何か金融的な大きな変化がありそうですね。今までの国の借金もこうだと言うけれども、実はそうでもないじゃん的な流れが出てくるような気がするんです。

ヤス おそらくそうだと思う。この3つの流れが連関して非常に大きな流れになってくるということだと思うんですね。まず銀行が食えなくなってきてる。銀行というビジネスモデスルそのものが、もはや成り立たなくなってきてる。その結果、銀行はどんどんリストラをやりはじめてるんです。人員削減。

西塚 今やってますか?

ヤス やってる。まだ日本まできてないけど、欧米の金融機関で人員削減がはじまりました。たとえば、ゴールドマン・サックスがトップマネージメント19人のクビを切った。

西塚 給料の高い連中ですね。

ヤス 一番給料の高いところから切るんです。それからクレディ・スイスが35万ドル以上、日本で言えば4000万以上ですね、4000万以上の年収をとってるマネージャーのクビは全部切ると。クビを切ったあとどうするかというと、人工知能に全部置き換えると言ったんですよ。つまり第1と第2の流れが合体するんですね。

すなわち、銀行が生き延びる策として、人工知能を活用しながら現在のマネージャークラスの銀行員のクビを切っていく。そういう流れがおそらくはじまるだろう。

一方ではマイナス金利をとらざるを得ない状況になってくる。すると銀行にお金を預けてもしょうがいない。だから銀行から全部現金をおろして箪笥預金をする。でも不安だと。そうすると、銀行並みに安心できて、そして金利もくれる、何かそういう機関があったら預けたいと思うわけですね。

西塚 フィンテックですか?

ヤス そう。それが社会的インパクト。それが投資のひとつのモデルになってくると思うんです。われわれは銀行並みに安心ですよと。

西塚 だから去年あたりからフィンテックがガーッときてるわけですね。

ヤス そうです。リスクはとことん低いと。銀行に預けるのと同じような状態で利子だけは高いですよと。そういうモデルを現在の金融工学者たちが考えて、それが社会的インパクトというモデルになってくる。それが最底辺層のプロダクティビティー、生産性を上げて、街全体を変えることによって、ひとつの国の経済成長の目玉にしていく。

西塚
 となると、図らずも2009年、たとえば日本で言えば民主党がやろうとしたことが、逆に最大の敵であったかもしれない国際金融資本を含めた、そういうフィナンシャー側からですね、町興しよろしくシステムをガラッと変えていくという。そういう地域分散型のシステムを金融工学のほうから提示するという流れになってきた。

ヤス そうなんです。システムを作った連中がスピンアウトしてやってるから(笑)、画期的なんです。扱う資本量も半端じゃないんですね。500億ぐらいを簡単に動かして、街全体を変えていくというようなプロジェクトなんです。それは、さっき言った人工知能、没落する銀行、それから家に現金を蓄えててもしょうがいないと思っている大多数の国民たち、それらがこの流れと連動して極めて大きな流れになりつつある。

これがですね、次の金融システムを目指す流れとして、実は未来が見えてきたということだと思います

西塚 そうですね。少なくとも大きな意味でのインフラというのは見えてきましたね。先進国に限らず、地球上に住んでいる人類の本来の意味でのリストラクチャーという感じがしますね。

ヤス そう、リストラクチャー。このままいくと現在の金融システムというのは内部崩壊する。内部崩壊する前にですね、特に大口の投資家たちが新しいシステムのほうにものすごい勢いで移ってくる可能性があります。

西塚 人工知能の話は興味がありますね。これから何の職業がなくなるかという話があって、全部は覚えてませんが、たとえばタクシー運転手がなくなると。自動運転にもなるし。いわゆる事務系はいっさいなくなる。ほとんどの職業がなくなっていくと言われますが、じゃあ何が残るかといったときに、たとえばツアーコンダクターとか、僕はそれも怪しいとは思いますが、顧客の要望に従って臨機応変に組んでいくというもの。

あとネイルアーティストとか、ネールを塗ること自体は機械でできるんだけども、好みを聞いて提示して、どうのこうのとニュアンスのやりとりをする。そういう職業は残るんだと。たとえば焼き鳥屋のオヤジとか、誰でもできそうだけども、僕なんかは酒飲みだから、ベルトコンベアー化したような焼き鳥屋だと、安くても味気ないとか、やっぱりあの店だよなってことになってくる。人工知能は、おいしいものもできるかもしれないけど、微妙なニュアンスは…わかりません、できるかもしれない。

文章なんかはさっきも言ったように、もう数年前から、スポーツ記事とか、ニュースリリースを見て書くような記事は、大手の場合は人工知能が書いてたりする。小説にしても、今まで地球上で出版された本のデータを全部ぶち込んで、この時代にこれが売れて、どこの国でどのくらい売れたか、全部データが入るわけだから、簡単にベストセラーも出せるかもしれない。

でも、たとえばヤスさんの本が読みたいとかですね、三島由紀夫が読みたいとか、人間個人に還元されるものは僕は残ると信じたいですが、どうなのかということなんですが…

ヤス 今、西塚さんが言ったことを端的に言えば、マスであるものはほとんど人工知能に置き換えられていく。残っていくものは何かというと、マスではどうしても手が届かない固有性だと思います。たとえば焼き鳥屋に関しても、その焼き鳥の味だけを食べにいくわけじゃなくて、そのオヤジ、雰囲気全体があるじゃないですか(笑)。

西塚 それがですね、専門家の話によるとそれもよくわからなくなってきて、焼き鳥屋はちょっとおいておきますが、たとえば“愛”ってあるじゃないですか。私は愛してると。人工知能が、今はディープラーニングですから、いろんな意味でストレートに応答するわけではなく、ときには「わからない」とか「知らない」とか言って、プイと横を向くということも含めた情報が全部インプットされる。

だからそういう反応をされた場合、これは気まぐれな人間の女なのか、コンピュータの計算なのかというのは、わからなくなってくるわけですね。そうすると本当に、自分が相対してるのが人間なのかコンピュータなのか、わからなくなってくるのではないか。

ちょっと話をずらすと、そういうロボットに対して親和性が高いというか、違和感を持たないのが日本人らしいんです。一神教、たとえばキリスト教文化圏の人たちは、最後は下の世話を含めてロボットに介護されたいかというと、イヤだという人のほうが多い。日本人の場合、昔からロボットは、たとえば鉄腕アトムのように、ロボットを人間と同じように扱うというマインドがあるじゃないですか? それでなくても八百万の神と言って、どんなものにも神が宿っているとする文化なので、わりとロボットに違和感がない。

実際、日本の年寄りに、人工知能に下の世話とか介護されのはイヤですかと聞くと、ほとんどイヤではないということらしいです。そういうアンケートがあるという。7割近かったかな、私は平気だと。海外ではガクンと下がる。

そうなると、もともと民族とか文化に根差したものと人工知能とのマッチと言いますか、それもけっこうでかい問題になってくるのかなという気がします。

ヤス それは人工知能というか、人工知能を組み入れたアンドロイド。そのアンドロイドで一番人間に近いものを出したのは、ハンソンロボティクスという会社ですね。あとでちょっと、僕のiPadにビデオが入ってるのでお見せしますけど。

西塚 それはダッチワイフじゃないですよね(笑)。

ヤス ダッチワイフじゃない。でも、ダッチワイフになれるものですね、あれ。そのハンソンロボティクスのソフィアというアンドロイドがいて、あまりにもリアルで、やっぱりディープラーニングができるので、普通の人間の会話とほとんど変わらないですね。それを紹介したCNBCの記事があるんです。あなたはロボットに恋をするかもしれないという記事なんですよ(笑)。

西塚 それをもっと突きつめると、われわれ人間はロボットなんじゃないかという話までいってしまうわけです。

ヤス まあ、そうね。そこまでいくと、ロボットと人間の違いなんて考えなくてもいいんじゃないかというところにいくわけです。われわれが見抜けないくらい、たとえば焼き鳥屋のオヤジがいてね、そのオヤジしか作れない焼き鳥を焼いて、煙がある場末の雰囲気も全部アンドロイドだということが見抜けないくらいリアルになったら、その時点で人間とアンドロイドの違いは何かと言えば、ほとんどなくなる。

西塚 なくなります。だから人間優位というところからすべて発してるんですね、おそらく。悩みであるとか。光瀬龍の『百億の昼と千億の夜』という小説があって、萩尾望都が漫画化してますが、それに近いというか、仏陀やキリストやプラトンが出てくる話ですが、最終的にはどこかの実験室でのひとつの実験場だったというような、まあ完全にSFです。そういうことまで思い浮かべるような話だなと思いましたね、今回のAIの話は。

新潮流の根底にある“善意”

ヤス 話を戻すと、3つくらいの流れがひとつに合体して、大きな大河のような流れを作りはじめる。その大河の流れは、たとえばグローバルエリートが何かプランを持って動かそうとしてるとかね、そんなものは吹き飛ばすくらいの流れになってくる。どうも今年の3月の前半くらいの時期に、その新しい流れが主流になってくるという舵がもう切られたのではないかなという感じが、僕はしますね

西塚 その舵というのは、自然にですか? それとも誰かが切ったとか。

ヤス 僕はロシアが極めて大きかったと思う。今回、情勢全体のスタビライザーとして、どの領域でも大きな役割を果たしたのはプーチンですね。どの領域でも不安定要因だったのは米英ですよ(笑)。それとトルコ、サウジアラビア。すべての領域の地政学的な火を消して歩いてるのがロシアで、全体のスタビライザーになって治めてしまったという形ですね。あれは大したもんだと思う。

西塚 ユーラシアと言うと違うかもしれませんが、ヨーロッパで言えばいろいろ覇権の歴史がありますね、スペインの無敵艦隊みたいなものも含めて。でも、金融システムは大英帝国に根差していて、それがもう滅ぶという感じなんでしょうか?

ヤス でしょうね。これからある意味で資本主義が限界を迎える。そのあと、第2第3の金融資本そのものの大きな崩壊が起こって、どのような社会になってくるかというと、僕が本に書いた超階級社会がくるといったような、けっこう真っ暗なシナリオが主流だったと思います。グローバルエリートみたいなものがいたとしてですけど、そういう存在は、社会主義的な超階級社会に誘導するようなさまざまな仕掛けを練っていた。実際、そういう方向に進んでいたと。

しかしながら、全部それが先に火を消されてしまって、それとは根本的に違った新しい流れが主流になりつつある、スイッチしてる段階にわれわれはきたのではないか。

西塚 そのときに、いわゆるビリー・マイヤー的なものに象徴される、今のところ一番まともというか、書籍も膨大でとてもすぐに読み切れるものではないですが、そこに著されている高次元の地球外生命の、僕は高邁な思想と言ってもいいと思いますが、それとの絡みで言うとどうなりますか?

要するに、地球上ではある種のマインドシフトなり、システム自体から、いわゆる国際金融資本、グローバル資本の中から自浄作用として何かができつつあるのかもしれないということと、地球人に対する警告も含めて、核の自滅も含めた情報をさんざん送ってきてる地球外生命というもの。その中のわりと信頼できるビリー・マイヤーの書籍に出てくる地球外生命と言われる存在との絡みで言うと、どんな感じなのか。

ヤス
 地球外生命がいるかどうかはわからない。ただ、ビリー・マイヤーの本の中身は哲学的なレベルでものすごく高度で、賛同できるような内容ばかりですね。今の流れを見てて、大きな主流となるような、たとえばソーシャル・インパクトとか、人工知能であるとか、ある意味で建設的な流れを作ってるのは何なのか。やはり人なんですよね。

それがどういう人かと実際に見ると、たとえば金融工学者、新しい金融資本のモデルを構築してるような金融工学者はどういう人たちかというと、今までの金融工学者とはちょっと違った連中なんです。有名なのはジョン・ソーという人ですね。韓国系のアメリカ人ですが、かなり有名な人です。彼もそうだし、今までのね、リーマン型というか、サブプライムローンを組んだCDOとか、いわゆる不動産担保の証券化のMBSであるとか、ああいう金融商品を考えていたような金融工学者とは違ったグループです。

それは何かというとね、善意なんですよ(笑)。

https://youtu.be/ByTf8tRbtKU

西塚 善意?

ヤス うん。顔に書いてある。もう善人の塊りみたいな人が出てきたということですね(笑)。明らかに根本にある想念が違う。全然違う。彼らが悩んで、オレたちはとんでもないことに手を出してしまったと。本来やるべきことをやろうと(笑)。

西塚 ギャグっぽくなりますが、ローマ法王がきたときに号泣したベイナーのような(笑)。いきなり良心の呵責にとらわれて、本来の善意が現われてきて、オレは何てことをしてしまったんだと。

ヤス そうそう、それで下院議長を辞めてしまったっていう。

西塚 あの流れですね。じゃあ、象徴的に言えば、ベイナーからはじまってる(笑)。

ヤス そうなんですよ。本当にね、顔を見ればわかる。善意そのもののような人たちが現われてきた。それでそういう連中がわれわれで作ろうぜと言って、システムを作りはじめてる。

西塚 それとは違う意味かもしれませんけど、たとえば安倍もですね、ある種トーンダウンしてきたのは、スティグリッツとかクルーグマンがやってきてアベノミクス自体を否定したときに、それは貴重な意見をいただいたと言ってトーンダウンして、消費税を上げないということも含めて、結局は外圧というか、外からそういう雰囲気になってきたから日本も萎縮してきたという。

ヤス おそらく安倍内閣のひとつの大きな特徴というのは、フレキシビリティーですね。

西塚 ああ、逆に。

ヤス 逆に。流れを読んでバンッとすぐ乗り換えて、乗り換えた上で自分のやりたいことをやるという感じの、フレキシビリティーだけはありますよ。それは民主党にはない。どうも見てるとね、われわれが負け込んできてると読んでますね。明らかに。流れとして。

西塚 むしろ今になって、民主党なんかより、別にネガティブキャンペーンとか褒め殺しではなくて、安倍さんくらいリーダーシップがなければダメだという話もあるようです(笑)。ものすごくリーダーシップがあると。確かに、あれだけのことを強行するわけですから。内閣法制局長官を替えるとか、安保法制も無理やりやるあの実行力。ものすごいリーダーシップがありますね、安倍さんは。方向が間違ってるだけで。そういう見方も確かにできるなと。

もちろんヒトラーになっちゃまずいんだけれども、鳩山さんにあれがあったらもっと違ってたかもしれない。タラレバだから言ってもしょうがないですが。

ヤス 個人の問題じゃない。あれはプロジェクトでやってるわけだから。ほとんどの高級官僚を配下に治めて、プロジェクト全体でやってるわけですね。

西塚 ああ、そうか。

ヤス だから安倍でなくてもあれくらいはやる。安倍に実行力があるように見せかけてるだけですよ。

西塚 ああ、そうなのか…

ヤス 個人の問題じゃない。安倍内閣というのは、アメリカの軍産複合体が作ったような内閣です。

西塚 でも、ちょっと教養とかあれば、官僚がそっちにもっていこうとしても、オレはそれはできないよと言えるじゃないですか。

ヤス それは鳩山さん(笑)。

西塚 じゃあ安倍はパーだからできたということか…

ヤス いや、そうじゃなくて、安倍がやりたいことが官僚がやりたいことだった。また官僚がやりたいことが安倍のやりたいことで、そこにほとんど差がないということです。

西塚
 なるほど。結託したわけですね。

日本の官僚型頭脳の限界

ヤス 結託したんです。だから米軍産複合体と、いわゆる高級官僚で既得権益に絡んでるような人たちと、現在の自民党内部の極右というか、日本会議に代表される極右の層といったものが結託して作った内閣ですね。その中では利害の完璧な一致があるわけです。

そのような中で、安倍がたとえばこうやれ!と言って、ハイと何でやるかというと、当然同じ方向を向いてるからですよ。指導力があるように見えるってだけの話だと思いますね。

西塚 それが今ちょっと旗色悪くなってきた(笑)。

ヤス 旗色が悪い。高級官僚と安倍、それから軍産複合体、それとつるんだ経団連の一部と、この全体の既得権益グループそのものの旗色が悪くなってきたということです。全然違う流れのほうになってきてる。

アベノミクスは失敗する。失敗したあとに最終的に出てくるのは、フィンテックを中心とした社会的インパクトの投資であるとか、ああいった新しいシステムがどんどん、いろんなところから勝手に勃興してくる。そういうものに、場合によっては自分たちが押し流されていくという流れですね。もうすでにね。負け込んできたという感じだと思いますよ。

だから、小泉(純一郎)さんも指導力があるように見えた。見えたというだけです。

西塚 見えましたよね、確かに。

ヤス 安倍も指導力があるように見える。鳩山が指導力があるようには全然見えない。

西塚 見えなかった。

ヤス それは現代の日本の体制の中で、最大の既得権益者である高級官僚を敵に回してね、何かを実現するということ自体が不可能だということです。だから、それを個人の指導力として見誤ったらダメだと思いますよ、僕は。

西塚 なるほど。そういう何というか、中国ほどではないにしろ、日本にもでき上がった官僚システムといいますか、おそらく官僚ひとりひとりもですね、普通の人なんでしょう。東大法学部を出た人たちが自己の役割に徹した結果、そうなっていったということなのかもしれません。とんでもないヤツが野望を持って、ということではないんでしょうね、おそらく。

ヤス 野望というか、高級官僚と話すとわかりますけど、すさまじく傲慢な人が多いですよ(笑)。

西塚 何かで読みましたが、官僚の究極の目的は出世とか。

ヤス いや、そうですよ。どこにプライドを感じるかというと、自分たちこそが国家を運営しているのだというプライドと誇りですね。国民はバカなんだという徹底した認識があります。バカな国民をね、少なくともわれわれの力によって幸福にしてやってるんだと。国家運営のすべての責任を負っているのはわれわれだ。それが官僚組織である。そうした官僚組織の中で上に上がってくるということは、より国家のマネージメントの全権を委託する近いところまでいくわけですね。そういうような人たちの集まりです。だから普通の人というよりも、普通の傲慢な人ですね(笑)。

西塚 天下り先を確保するようなのがどんどん出世していくと言いますからね…

ヤス そう。日本の伝統的な官の思想というのがあって、官によってこそ日本の国家そのものが運営され維持される。われわれこそが日本の国家の操縦者であると。

西塚 そう言えば、大学生の娘が居酒屋で飲んでたら、隣で何人か、お別れ会みたいなことをこじんまりとやってたらしいんですね。そこに合流して飲んだと。そうしたら東大の連中で、仲間のひとりが留学するというので、ある種壮行会みたいなことをやってたんでしょう。そこで議論してる。

聞いてるとふた手に分かれてて、卒業したらこうしたい、自分の夢はこうだとか何とか、いろいろ青臭いことを言うヤツと、まあそれはいいんだと。理想もいいんだけども、それを作る側、操る側に回ろうじゃないかと言う側に分かれてる。後者は完全に官僚志望だったらしい(笑)。

だから同じ東大生でもふた手に分かれてて、片や夢を語り、もう一方は、オレたちはエリートだから、そういうヤツらに夢を与えるシステムを作るほうなんだから、そっちにいこうやと。そうしたら、こういう人たちが官僚になるのかと、娘は複雑な顔をしている。多くは語っていませんでしたが、何か21歳の心を痛めているようでした(笑)。だから、ある種の官僚のラインというのが延々とあるんでしょうね。

ヤス 本当に頭がいいヤツというのは、それが官僚の文化であるということに対して疑いを持ちます。だから、そんなには頭はよくない(笑)。話してみたらわかるけど、普通のヤツなんですよ。

西塚 まあエリートですね。

ヤス 日本の東大的なトップというのは、さほどすごくはないんだけども、何というか、やはりマニュアル的なトップですよ。マニュアルを与えられて、それに対応してきちんとした解答を出せと言われたら、きちんとした解答を出せる。それ以上のことはできないという人たちの集まりだと思いますね。

欧米の、まあハーバード大学とかスタンフォードとか、本格的なエリート校だとあまりそういうヤツは出てこない。システムを作る側に回ろうぜと言って回るのは、既存のシステム側じゃないですか。その既存のシステム側に回って、最終的に既存のシステムの中に取り込まれて終わるわけです。すると、取り込まれた上でね、システムを作るということはどういうことかというと、出世街道を歩むしかないわけです。

西塚 そう言えば、この間の週刊文春でいい記事がありました。東大とハーバードの違いについての記事なんですが、朝日新聞社の灘高から東大法学部入った記者が書いてるんです。これが面白かった。

ヤス どんな感じ?

西塚 東大とハーバードがいかに違うかということなんですが、ハーバードの学生はとにかくユニークで幅広い。試験というのは、もちろん学力テストもあるわけですが、極端に言うと決め手はエッセイなんですね。何百字かのエッセイで自己アピールする。しかも単なる自己アピールではなく、自分がハーバードに入学したらどれだけハーバードにメリットがあるのか、貢献できるのかという、ほとんどプレゼンなわけです。だから大学側も人間力を見る。東大のペーパーテストのようなものではわかりませんね。だいたい合格する判定基準というのがそもそもよくわからない。事前準備ができないわけです。それで合格率5%くらいの難関を突破してくる。

その朝日の記者の灘の後輩がふたりハーバードに入ってて、彼らに協力してもらって取材してる。彼らがまた優秀で、ひとりは東大にも入学してるんですが、数カ月でやめてハーバードにいく。東大のキャリアも一応とっておいたんでしょうが、要するにこういう人間もやはりいるんだなあと思ったわけです。高校からもうハーバードを目指してる。東大にいって官僚を目指してるヤツとはやはりちょっと違うんじゃないかと。

ヤス 違う。根本的に違う。何にもない0状態からシステム全体を作り上げるんですね。

西塚 まあ、その差のことを書いた興味深い記事でした。自分は朝日で万年ヒラ社員でどうのこうのと、自虐的なことも書いてるんですが、文章はうまいし、大したものだと思いましたね。最近、文春はスクープも飛ばしてるし、編集長は優秀ですね。週刊誌はああじゃなくてはいけない。

ヤス なるほど。まあ何というか、民と官のね、官を作った頭のよさというのは、あまり有効性がなくなってきてるんだと思います。

西塚 そうですね。既存のものをいかになぞって、それを完璧というか、洗練していくかというくらいの話ですね。今おっしゃったように、無から有というですね、システムを作るまでいけばすばらしいけども、少なくとも提示するとか、構築するところまでとても頭がいかない。

ヤス 0ベースから何かを作り上げられるかどうかってことです。発想力があるかどうかということだと思いますよ。

西塚 そのへん僕は、無から有を作る力はないと言われちゃたんですよ(笑)、ある人に。何かをつなげることはできるかもしれないけど…

ヤス いや、僕もないですよ、それは。

西塚 それは違うと思います。

ヤス あんまりないけどな(笑)。

西塚 ずっと僕がヤスさんをインタビューする形でやってきてますが、今度はいろいろな人も招いて、僕がインタビューするところを突っ込んでもらうとか、そういうこともあってもいいかなと思います。

ヤス ああ、いいですよ。僕から西塚さんにインタビューしてもいいですよ(笑)。

西塚 いえいえ、僕が答えるものは何もないですから(笑)。もう時間もきましたので、あとは個別の問題として次回以降、おうかがいしたいと思います。また来週よろしくお願いします。どうもありがとうございました。

ヤス
 どうもどうも。

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