人気ブログ『ヤスの備忘録』でもおなじみ、
社会分析アナリストの高島康司氏をお招きして、
1 世界で今、起きていること
2 人間の新たなる「精神性」「意識」「思考」
について、飲みながら自由闊達に話すシリーズ。
基本的に毎週更新。
〇『酔っぱらいオヤジのSpiritual Meeting』第70回
「抑圧された想念の解禁」
ゲスト:高島康司氏
聞き手:西塚裕一(五目舎)
2017年2月5日 東京・八王子「トラハル」にて収録
西塚 『酔っぱらいオヤジのSpiritual Meeting』の第70回です。また、八王子にきています。今日は新しい店ですね。よろしくお願いしまーす、カンパーイ。
ヤス 70回はすごいね。カンパーイ。
西塚 前回はヤスさんのメルマガとも絡めて、トランプ政権の正体ということで、お話をうかがいました。だいたい3つくらいに分けて、日本人がまだ知らないような情報を流していただきました。あれからさらに何かありますか? 今、大統領令も含めて、ガシャガシャやりはじめてるようですが…刻一刻と情勢も変わっているようなので、前回のメルマガや『おやすぴ』、今この5日の日曜日の時点で、ヤスさんのお考えに変化はありますか?
再確認、トランプ政権とは?
ヤス トランプ政権の正体を見極めるということで、多くの地政学の専門家の間で論争されましたが、だいたい3つくらいのパターンがあります。前回の繰り返しになりますが、第1のパターンは、エスタブリッシュメント対反エスタブリッシュメントという図式で捉えるパターンです。これが一番多いですね。現在のオバマ政権までのアメリカには、大きな4つのパワーグループがあるわけです。ネオコンだし、軍産複合体だし、ウォールストリートだし、エネルギー産業というね。
それに対してトランプというのは、本格的な意味で反エリートの政権だと。グローバリゼーションの波に乗り遅れて、没落した中産階層の怨念を背負って、その勢いに乗って立ち上がってきた政権なんだ。従って、もともと反エリートというアイデンティティーを持っている。今までアメリカのエスタブリッシュメントが主導していたようなグローバリゼーション、市場原理主義、そういうものに対して没落した中産階層の利害を代表する政権であると。政策的にはローカリゼーションだし、孤立主義だし、保護主義だという方向を打ち出している。
これは日本でもすごく一般的で、田中宇さんとか、宮台真司さんとか、かなりの人たちがこの図式で捉えています。農民一揆的、革命的だという捉え方。だから、トランプの就任演説は革命の檄文なんだという。いってみれば、“一揆政権”というニュアンスですね。
アメリカでも非常に人気のあるセイカーですが、ちなみにセイカーは“はやぶさ”という意味なんですが、もともと軍事ジャーナリストで国連職員だった人ですね。表に出ている著名人というわけではないですが、分析があまりにも鋭い。もともとロシア人でアメリカ移民です。ロシア語はベラベラで、ロシアの情勢に精通している上での分析なので、大変に鋭い。
今のアメリカは非常に水準の高いネットメディアがたくさんあるので、たとえば日本で言えば『videonews.com』くらいのネットメディアがあるんですが、彼はそういうところで引っ張りだこですね。本も出してます。ウクライナがどういうふうになるかとか、よく当てる。
西塚 メジャーなメディアには出ない?
ヤス 出ない。本名を隠してるし。
西塚 ヤスさんみたいですね(笑)。でも、ヤスさんは本を何十冊も出してるか。顔も出されてるし。
ヤス そうそう。だから、セイカーは分析の鋭さから見て、僕のようなというとヘンですが、外部から普通に情報を集めているというレベルじゃないんです。ロシアの考え方がどういうものであるかとか、本当にディープなところまで分析して出してくる。
西塚 何かパイプがあるんでしょう。
ヤス いや、あるでしょう。なければ無理だと思う。まあ、セイカーは代表的な人ですが、それ以外にアメリカで一般的にトランプ政権を捉えようとしている人たちは、そういう「エリート対反エリート」の図式。たとえば、ジャパン・ハンドラーズっていましたね。有名な構成要因にマイケル・グリーンがいますが、彼のインタビューでも、これは本当に反エリート的な政権だという言い方をするわけです。それが第1の見方。アメリカの80%くらいがそういう見方をしてるんじゃないかと思います。
だから、没落した中産階層の怨念を担った反エリート的な政権であるがゆえにね、予想がつかない。大枠の方向としては、保護主義だし、グローバリゼーションの否定だし、ローカリゼーション、現在の世界のグローバルな政治・経済のルールを無視することを前提にした政権だと。
西塚 日本でもそういう見方が主流ですね。
ヤス そうです。主要メディアでも専門家でも、だいたいそういう見方で共通してると思う。
西塚 僕は、それはわかるんですが、個人的な希望的観測を反映させた考え方だと思うんです。客観的ではないですね。まあ、余計なことですが。
エリートたちの内部分裂論
ヤス それに異を唱えてるのが、F・ウィリアム・エングドール。あの人は中国の大学で教えていますね。地政学の講座を持っている。ロシアの大学でも持っている。それでドイツに住んでるんです。ドイツ在住のアメリカ人。ものすごく実証的な調査とデータに基づいて、何が起こっているのかを表現していく。今、アメリカで地政学に興味がある人だったら、エングドールは必ず読むと思います。それくらい著名な人ですが、セイカーの仲間でもあるんです。
昨日かな、エングドールの最新のインタビューがありました。いろんなところに出ずっぱりなんですが、私の意見は反主流だと。しかし、エングドールが一番、実態に近いんじゃないか。それは、トランプが反権力のわけがない。そうじゃなきゃ、大統領になるわけがない。トランプの背後には絶対的な勢力がいる。実はアメリカのエリートそのものが分裂したんだと。トランプの背後にいるのはキッシンジャーのグループだ。キッシンジャーのグループはどこにつながっているかというと、ロックフェラーだと。
彼らはどのように見てるかというと、ネオコンと軍産系にアメリカの外交政策をまかせた結果、ロシア敵視策がいきすぎてしまった。その結果、中国とイランとの同盟のほうに追いやってしまった。そして、ロシアと中国の同盟を中心とした強力なユーラシア経済圏ができつつある。それからアメリカは完璧に排除された。アメリカ覇権の喪失を促進させてしまったのが、ネオコン型の外交政策だった。そういう大きな反省がある。
それを逆転するためには、ロシアに手を差し伸べて、アメリカがロシアを抱き込まなければならない。そして中国とロシアとイランを分裂させる。上海協力機構というのがありますが、そこに結集しているロシアと中国などの同盟関係の勢いを削ぐ。そういう政権を作るためにはどうしたらいいか。没落した中産階層の怒りをリソースとして使いのが一番いいだろうと。トランプ政権はそれででき上がった政権なんだというわけです。だから反エリートでも何でもない。
だから、最終的にトランプの背後にいるはキッシンジャー。キッシンジャーの作り出した傀儡政権みたいなものである。外交政策は、ほぼキッシンジャーの手によっている。キッシンジャーはバランス・オブ・パワーということを前提にしながら、アメリカの覇権の維持を担う。キッシンジャーが70年代に何をやったか。アメリカが中国を抱き込むことによって、ソビエトから引き離す。それと同じことを今度は中国に対してやろうとしている。すなわち、ロシアを抱き込むことによって中国を孤立化させて、中国の力を削ごうとしている。
だから前の均衡理論、バランス・オブ・パワー、地政学による同じストラテジーを今度は中国に適用しようとしているだけだ。それを実行するための政権がトランプ政権だということです。
西塚 4つくらいあるエリート層の分裂に基づく、ある種の巻き返しの結果できた政権だというのが、エングドールの見立て。
ヤス そうです。この見方というのは、日本でもあまり出てません。ほとんど、一揆政権という見方が中心なので。
西塚 そのへんは、安倍内閣はどうでもいいんですが、政府というか官僚はどう見てるんですかね。
ヤス 僕の印象では、間違ってるかもしれませんが、官僚って僕はすごく頭がいいと思ってるんですよ。いろんなきっかけで何人か高級官僚と知り合って話していると、たしかに頭はすごく切れるんですが、限られた専門分野のプロフェッショナルという感じでしたよ。
西塚 でもあれだけ、皮膚感覚でどうしたら自分にとって得かと敏感に察知して、頭もいいからそれに基づく政策を立案して、政治家に喋らせるというのが得意な人たちじゃないですか。
ヤス 大局は見てないんじゃないかな。
西塚 そういう連中は、今どういうふうに見てるのかなと思うんですね、トランプ政権に対して。たしかに泡を食ったとは思うんだけど…
ヤス どういう政権かというアイデンティティーの決定はしてないかもしれませんね。だから、トランプ政権がそれぞれ出してきたポイント、いろんな政策のうち、日本に関わる部分のみに限定して、それに対応してるという感じがしますね。
西塚 今回、トランプとオーストラリアの首相との電話会談で、トランプが最悪の電話だと言ったという報道もありましたが、安倍首相に関しても絶対に信用しないだろうという話があります。そもそもマルコ・ルビオと仲よくなって、その次にヤバいとなってヒラリーに近づく。そして今度はトランプだと。そんなの誰も信用しませんよ。ましてやトランプのような人は、絶対コイツは信用できないと思ったはずです。
第4次産業革命の主導権争い
ヤス そうですね。いずれにしろ、先のエングドールの図式は今、アメリカ国内ではだんだん拡がりつつありますね。やっぱりそうだったのかと。それで第3の図式というのが、前回メルマガでも紹介したブラジルの非常に著名なジャーナリスト、ペペ・エスコバルが提示した図式で、簡単にいえば、アメリカのどの政権でも最大の課題になっているのは、アメリカの世界覇権の維持である。これは絶対的な命題である。しかしながら、アメリカは今、世界覇権を維持できる状態にはない。
なぜなら、軍事テクノロジーでロシアに負けた。それを証明するレポートが出てきていて、CSIS(戦略国際問題研究所)ってありますね、アーミテージとかが結集している。あの出先機関みたいなもので、CNAS(新アメリカ安全保障センター)があるんですね。軍事問題専門のシンクタンクで12月16日のレポートではっきりと、われわれはロシアに軍事テクノロジーで負けたと宣言した。
ロシアというのは、第4次産業革命で予想されるテクノロジー、AIであるとか、完全に無人化軍隊、極めて高いアンドロイドのテクノロジーとか、そういうものに基づいた軍隊が実現しかかってるというわけです。そのレベルから見ると、アメリカの軍事テクノロジーは徹底的に負けた。
西塚 本当ですか?
ヤス 少なくともレポートにはそう書いてある。または負けてなくても、このままでいくと負ける方向に向かっている。負けた一番大きな理由は、アメリカの民生の産業がありますね。製造業とかITとか、世界の最先端に立って第4次産業革命を主導するような立場にあるんだけど、しかし軍事テクノロジーが、民生の非常に高度に進んだテクノロジーにアクセスできるような体制になっていない。
軍事産業は軍事産業で小さな村の中で循環してしまって、外部にある産業のテクノロジーにアクセスできていないというわけです。それが一番大きな問題だと。だから、軍事産業の生産体制を根本から変えなくてはならない。そのためには時間的な猶予が必要で、まずロシアとの関係を改善する。でも、ロシアもそう簡単にはダマされない。だからアメリカ国内で敵同士を作って、本格的に戦ったフリをせねばならない。それが権力対反権力であるとか、分裂したエリート間で戦うという図式だ。
西塚 なるほど。前回も言いましたが、何か腑に落ちないんですよねえ、明快すぎちゃって…
ヤス あ、3番目?
西塚 ええ。たしかにアメリカが負けたのかもしれませんが、たとえばスーパーコンピューターでいえば中国がずっと1位で、日本も省エネ部門では1位、あとはアメリカで、ロシアなんか出てきませんね。軍事部門で機密事項にしてるのかもしれませんが、アメリカにしてもそんなに進んでないわけないと思うんですよ、AI関係で負けたというのも、何かフェイクっぽい気がしないでもない…
ヤス その可能性はあります。アメリカというのはかなり大げさに捉えるんです。ちょっとでも自分たちの絶対的な優位が脅かされると、ものすごく警戒するんです。あからさまに警戒心を出す。
西塚 『ジャパン・アズ・ナンバーワン』のときに日本は脅威だという、ああいう反応ですか?
ヤス そうそう、ああいう反応ですね。だから僕は、それは十分あり得ると思う。でも、一部の分野でロシアの製兵器というのは、たしかにアメリカを超えているのは事実です。たとえば電磁パルス兵器、EMPというのがあって、あれはアメリカはまだ開発途上ですね。
西塚 電子パルス系は、アメリカはけっこう早くからやってませんでしたっけ?
ヤス やってる。ただ、いろいろ調べるとまだちょっと開発途上で、実践配備できてない。まだプロトタイプで。でもロシアの場合は、野戦で使われるくらいの兵器になってる。ちょっとうがった見方をすると、軍事テクノロジーというよりも、おそらく第4次産業革命を誰が主導するのかという争いだと思うんです。
西塚 第4次というと、AIとか仮想通貨とか…
ヤス AIだし、仮想通貨だし、アンドロイドだし、いわゆるIOT(Internet of Things)ですね。インターネットがクラウドにつながって、すべての家電に入ってくる。
西塚 そうなると国家を超えた話じゃないですか。むしろ民間企業の話になってきますね。
ヤス そうなんです。まさに民間企業の話なんですよ。そうした民間企業がどこに集積するのか。その民間企業の集積地を提供したところが、やはり第4次産業革命を主導するわけです。たとえば、アメリカのシリコンバレーに集積するのは事実ですね。
西塚 中国の深圳とか。
ヤス そう。中国の一部にも集積センターがたくさんあるわけです。中ロ同盟ということを考えれば、最終的にはロシアの軍事テクノロジーの基盤として使えないこともないだろうと。だから、第4次産業革命をどこのエリアが主導するのかという争いに、僕は見えるのね。
西塚 大きな流れでいえば、これからはどうしようもなくユーラシア圏に移っていくのは、間違いないんじゃないでしょうか? 中ロ中心でしょうけれども。
ヤス おっしゃるように、どうしようもなくユーラシア圏に移ってるんです。
西塚 中東あたりに対する覇権にしても、完全にロシアとか、特に中国が北アフリカも含めて全部入り込んでますね。
ヤス ユーラシア経済圏はどんどん拡大してます。この勢いは止まらない。ただ、ユーラシア経済圏の拡大のテクノロジーになるのは、かつてのインターネットやITを中心とした第3次産業革命のものかというと、違う可能性がありますね。
西塚 違いますね。
ヤス あきらかに第4次産業革命、AIとか仮想通貨とか、クラウドコンピューティングを中心としたタイプのものになってくるでしょう。それに基づいたインフラが一気にできてくる。
西塚 あっという間でしょう。特に事務系、デスクワーク系のホワイトカラーは全滅してしまう。
ヤス ホワイトカラーがもともとあったところから見れば全滅なんだけど、ホワイトカラーがないところから出てくる。だから、ペペ・エスコバルの図式を敷衍すると、実は軍事テクノロジーだけじゃない。そうすると、トランプ政権がやろうとしていることが、ある意味で一貫して見えてくるという感じがする。
まず、保護貿易をやる。アメリカの製造業の生産拠点をアメリカに戻す。第3次産業革命なりのグローバリゼーションのアイデアから見れば、いわゆる人件費が一番高いので、みんなそんなことができるわけないと思っている。でもトランプ政権は、考えてみえれば、本来そういうものではないぞと。
今、トランプ・インフラストラクチャー・プランといって、アメリカ全土にインフラをどんどん建設して、アメリカ経済を後押しする、それで没落した中産階層に仕事を与えるんだってやってますが、われわれはこれから道路を造ったり、ダムを建設したりするんだなと思ってるけど、そうじゃない可能性がある。第4次産業革命のインフラなのではないか。そうすると、正しいかどうかはわかりませんが、なるほどと筋が通ってくる。
だから、生産拠点をアメリカに戻すというのもわかるし、トランプ・インストラクチャー・プランもまさにその通りだしね。
西塚 いずれしろ、まとめると、アメリカに覇権をもう一度取り戻す。
ヤス そういうことです。
西塚 そのペペ・エスコバルの記事は、何だかわからないキッシンジャーより上位の存在からアクセスがあって、お前の見方は正しいと言われたということですが、それ自体がどうなのかなあという…何かしらの真実はあるのでしょうが…
ヤス ペペ・エスコバル自身も疑ってるんですね。自分のソースに関してはね。実証データからみると、エングドールの図式が一番実証的なんです。ジャパン・ハンドラーズが結集しているCSISは、理事にはキッシンジャーも入ってますし、今回のトランプ政権の主要な閣僚は、けっこうCSISの理事出身なんです。レックス・ティラーソンっているじゃないですか、国務長官になった。あれもCSISのキッシンジャーの同僚です。いってみれば、キッシンジャーの息のかかった人たちが閣僚の中心になっている。
西塚 となると、『おやすぴ』の流れを知っている人ならば、キッシンジャーといえば、例のコーリー・グッドの話にも出てくるキーパーソンですから(笑)。
ヤス 出てくる出てくる(笑)。
西塚 いわゆる、あの壮大なストーリーにも絡んでくるわけで、エスコバルのいう上位存在とは何だというところまでいく話ですが、それはちょっとおいておきましょう。
ヤス いくと面白いですね。その可能性はあると思いますよ(笑)。
西塚 そういうことも睨みながら見なければいけないとは思いますが…
ヤス ただ、エングドールでは腑に落ちない点があって、生産拠点をアメリカ国内に戻すとか、保護貿易主義をとるとか、これらの図式だけでは国内政策の整合性の説明ができない。あまりにも外交政策が中心にすぎて、内政的な政策が可能なのかどうか、そのポイントがどこにあるのかが説明できない。むしろ、それを説明できるのがエスコバルの説なんです。
西塚 そうですね。僕もあえていってる部分がありますが、いやらしくいうと、その説明できないようなところ、何だかよくわからないところが説明されすぎてる気がするわけです。
本来、ヤスさんがエングドールの図式だけでは説明できないという、はみ出しているというか、よくわからないエリアがあるとするじゃないですか。それは何だろうというのは、われわれというか、ヤスさんはヤスさんで探っていかなければならないようなフィールドなんでしょうが、何だろうというところをものの見事に説明したのがペペ・エスコバル的な見立てであって、僕はそこがちょっと腑に落ちないんですね。何かその…あまりにもきれいに納まりすぎちゃう。
ヤス まあ、たしかにそうですね。
西塚 そこに何かこう、これは正しいかどうかという直感ではなく、気に食わないというだけですね(笑)。
ヤス それはよくわかる。第4次産業革命を誰が主導するのか、どのエリアが主導するのかということは、エスコバルは言ってないんですよ。ただ、エスコバルの記事を読んで、僕がそう思ったわけです。なぜかというと、トランプの国内政策を有効に説明できる図式がないわけです、今ね。反権力の政権ということで没落した中産階層の利害を代表するから、ああいうことをやるんだと。ただ、それが可能かといえば、それは絶対無理。人件費があまりにも高いアメリカにね、製造業の生産拠点を引き戻すなんて絶対無理だと、みんないうわけです。そういうような見方が一般的。だから、トランプ政権はバカな政権で、のちのちに学ぶよねと。そういう結論になってくる。
でも、そういうふうに見えていても、おそらくそうではない。決定的にはずすと思う。おそらく国内政策にしても、練られに練られて考えられたものだと思う。だとしたら、国内政策に一貫した整合性を与える何かのバックボーンがあるはずなんですね。あるとしたら、第4次産業革命を主導するということがね、ひとつの説明原理にはなってくるという感じですね。
それはエスコバルが言ってるわけじゃなくて、僕がエスコバルの記事を読んで、そのように感じたということです。
西塚 ああ、なるほど。ヤスさんの意見なんですね。ヤスさんの意見なら知りたいですね。今のお話を聞いてわかりましたけど。
ヤス 僕の意見は、第4次産業革命といってるけども、すさまじい産業革命の転換期なんですよ、やっぱり。第1次産業革命、だいたい18世紀の終わり、1760年代から19世紀の初頭まで、資本主義そのものの勃興期。第2次産業革命は19世紀の終わりから、20世紀の初頭にかけて。これもですね、世界史的な体制として根本的に転換するだけの力があった。それから第3次産業革命というのは、いろいろな見方がありますが、ITとインターネット、コンピューターを中心としたもので、だいたい1980年代の終わりくらいから活性化していくわけですね。それぞれ半端な社会変革じゃないわけですよ。
西塚 そうですね。人類史に刻まれるような変革ですね。
ヤス どうもね、トランプ政権の背後にいるのは、それを先取りした新しい社会、国際経済システムを考えようとしているところじゃないかなと思います。それは、ロシアも中国もそうなんですよ。特に中国は。
抑圧されていた感情が解禁された?
西塚 そうしたことは、特に日本人、ひいては世界でもいいですが、人々のマインドとか気持ちに、老若男女を含めて何か変化が起きていくものなんでしょうか? あるいは、今もうすでに起きているのか、そのへんはどう思いますか?
ヤス いや、ものすごい大きな変化だと思いますよ。確実に進行していくこの第3産業型のテクノロジーの進化ですね。それによって、今の一番新しい概算だと、現代の一般的な仕事の47.5%が喪失するというわけです。その喪失率はどんどん高くなっていく。喪失した仕事に対する受け皿になるような新しい産業というのは出てくるのか。出てくるとは思う。ただ、出てくる新しい第4次産業革命型の産業というのは、雇える人数はごくごくわずかです、おそらく。そうすると最終的には、かなりの大きな数の人たちがあぶれてくる。
西塚 そういう、あぶれるかもしれない本人ですね。中高年を含めた内面など、具体的な変化とか、何か感じるものはありますか? 去年から今年にかけて。
ヤス それは感じますね。今までの安定した自分の日常生活の基盤を奪われるわけですから。そして、それに代わるほかのものがないわけです。適応しようとしても適応できない状態になりますね。仕事そのものがない。論者の中には、第4次産業革命がもたらす新しい雇用効果があるという意見もあります。
たとえば、よくそれで出てくるのがUberですね。タクシー会社が過当競争でどんどんなくなってくると。ほかにもいろんな仕事、サラリーマン的な事務労働とかが、第4次産業革命型のAIを中心としたシステムが導入されることによってなくなってくる。だったら、Uberみたいなシステムで食えばいいじゃないかと。これからは、そういう下からどんどん這い上がってくるようなシステムが出てくるぞという意見です。
ただ、基本的にそうはなり得ない。なぜかというと、新しい産業革命で出てくるテクノロジーというのは、どの時代もそうなんですけど、要するに雇い入れる人間の数は少ないんです。たとえば、第1次産業革命から第2次産業革命に移ったとき、それから第2次産業革命から第3次産業革命に移ったときは、膨大な数の失業者を出しながら変わっていくわけです。彼らが再吸収されるかというと、だいたいされない。それが非常に大きな社会問題になっていく。それと同じことが起こる。間違いなく。
そうすると、われわれが着目しなければならないのは、仕事を奪われた人たち、安定的な日常生活を奪われた人たち、没落した中産階層という言葉で要約されてますが、彼らの怨念が一般的なエネルギーになるということです。それが多くの人間の内面を支配するということです。めちゃめちゃ否定的な怨念。
西塚 日本でも、もう出てますか?
ヤス 出てきてる。
西塚 そういうふうに感じますか?
ヤス それはそうです。たとえば、2chのネトウヨ系統はだいたいそうです。インターネットが出てきてちょっとしてからですね。90年代終わりくらいからですけれども、やはり日本の昔のシステム、古い終身雇用制的なシステムが崩壊して、企業の労働者の吸収力がどんどん衰えていく。大学を出ても就職できない。フリーターにならざるを得ないような、膨大な数の若年層が出てくるということと比例して、そういう連中が出てきますからね。
西塚 それは具体的に、たとえば去年の11月の大統領選挙でトランプが勝った今、就任式まできて、このわずかな2カ月くらいですが、そこで何か変化を感じますか? 日本人というと大げさかもしれませんが、マインドの変化といったものですが。
ヤス 感じる。
西塚 それはどういうことですか?
ヤス 恨みは表面に出していいんだということ。解禁令ですね。アメリカではパンドラの箱を開けてしまったという言い方をする。人種差別は昔からあった。女性蔑視は昔からあった。イスラム教徒に対するものすごい嫌悪感は昔からあった。ただ、誰もそれを表面に出さないで生きてきた。表面に出すことは大変な破壊的な行為だと。普通の一般的な市民として見られなくなるという怖れがあった。だから、それを押し殺してきた。トランプがやったことはその解禁令だと。全部出していい。
おそらく、その解禁令みたいなものはグローバルな現象として進みますね。だから、いってみればトランプというのは、どの文化でも使えるグローバルなコインみたいなものです。
西塚 僕も同じようなことを感じますが、特にドゥテルテからトランプにいたって、最近でいえばミャンマーの虐殺ですね。イスラム系の少数民族のロヒンギャに対する迫害。ミャンマー人のほとんどは仏教徒なので。アウン・サン・スー・チーさんは否定しているようですが、おそらく虐殺はあったのでしょう。バングラデシュに膨大な数の人間が逃げてるようですし。それが報道されて国連が介入してきた。
だから、そういうことが正当化されたとまでは言いませんが、ある種ものすごい極端な暴力をともなったような排除というものが、ドゥテルテ以降、何かが麻痺したのか、許されているとも言いませんが…何というか、その構図自体をみんなが平気で受け止めてしまっているような気がします。
ヤス いや、一番大きなマインドの変化というのは、今までそういうようなことを思ってはいけない、表現してはダメだと嫌悪していたんだけど、それはいいんだと思ったんですね。許されるのだと。
西塚 そういう意味では、たしかにパンドラの箱で、ヤスさんのいう解禁ですね。それはすごく怖いことだと思います。
ヤス 怖いですよ。やっぱり、現実は人間の想念が創ると僕は思うのね。実際、それで動いているわけです。トランプ現象は人間の想念が創ったわけですよ。怒りがね。ということは、トランプを創り出したのと同じようなネガティブな力、抑圧したものの噴出と僕は言ってるけども、そのパンドラの箱を開けた想念の力がね、これから現実を創り出す主なエネルギーになってくるということです。大変なエネルギーだと思う。
西塚 そして、そういうエネルギーのことをちゃんとわかっている連中がいるかもしれないと思うわけです。そういう怨念を含めた大衆のエネルギーの操り方をですね。そういうネガティブなエネルギーをどこに持っていくのか。争いなのかどうかわかりませんが、そういうことまで考えを及ばせると、ちょっと相当怖いことになるし、しかもそこにコーリー・グッドみたいな地球外生物の話が絡んでくると、もっと壮大な話になりますが、いずれにしろ暴力、強権発動が許される方向に向かっているという気がします。
ヤス おそらくそうですよ。
西塚 2、3年前にヤスさんに見せてもらった『アトラス・シュラッグド』、あの映画の世界に近づいているのかもしれない。実現するかどうかはわかりませんが、準備されてるという気がしないでもないですね。
ヤス そうですね。現実を主導するひとつの想念といったものが、ギアチェンジしたんです、あきらかに。もうOKサインを出してしまったので、破壊的な想念がこれからいろんな現実を創り出していくということにはなると思う。極めて強権的だし、暴力的だという。
そうすると何が課題になってくるかというと、どのように想念を抑止できるかということです。破壊を抑止できるような、逆に働くようなひとつの希望を持てる想念の形があるかどうか。
西塚 僕はそういった意味で、先ほどの3つめのペペ・エスコバルみたいな、本人も疑ってるのかもしれませんが、あの見立てに眉にツバをつけて聞くわけです。ここまでインターネットが普及して、人類の想念の大きなダイナミズムが見えるようなところにきている時代ですね。そこで何者かが、その大きな想念を動かそうとしたときに、今までの村レベルとか、地域レベルとか、国レベルとは別に、大きな世界レベルの壮大な絵を描いて、その図式をある種信じ込ませるというか、そこに則って人類の意識を丸ごと操作しようとするに決まってるわけですね。
僕はそういった意味において、そのエスコバルにアクセスしてきたようなよくわからない連中が、ある図式をガチっと嵌めていくことにものすごく抵抗があるんです。
ヤス あまりにも規模の小さい図式の中に、壮大な現象そのものを当てはめすぎて、わかりすぎてしまうからうさん臭いという感じですね。
西塚 それこそ、人類をマニピュレートしようとするものがあるのかもしれない。
ヤス ペペ・エスコバルが正しいかどうかは別にして、あのような枠組みが存在し得るということは事実だと思うんですね。
西塚 そうですね。そういう見方はできる。
ヤス そのような見方が3つあるということは、ひとつの事実として存在するかもしれない。ただ、3つの図式そのものが、実は物ごとのポイントではないということです。
西塚 だから常に、もし3つが主流であれば、第4に目を向けるべきであって…
ヤス そうそう、第4って何かというと、はるかに深層にあるわけです。いってみれば、トランプのアイデンティティーが実際はどうあれ、すべての図式で変わらないのは、トランプが没落した中産階層の恨みを代表した政権であるということです。問題はそこなんです。パンドラの箱を開けたという事実です。われわれの現実を形成する想念の中で、今までは現実を形成しないような、個々のマインドの中でうまく抑圧されてコントロールされてたものが、タガがはずれたということです。
西塚 これはどう思いますか? あえてというか、半分くらい本気で言ってるんですが、トランプは当選したんだけれども、ブッシュとゴアのときのようにですね、フロリダで引っくり返すというようなことをやろうと思えばですよ、ものすごく薄汚いことをやろうと思えば、いくらでもできるアメリカじゃないですか。
しかもヒラリーとトランプとの競り合い、どっちが勝つのかみんなわからなかったという中で、結局トランプが勝っていくわけだけども、大きな支配層があるとすれば、これから人類を、まずはアメリカなんでしょうが、操っていくにはどういう方向がいいのかなと探っていたときに、勝たそうと思えばヒラリーを勝たせたんだけども、どっちのほうが自分たちにとって有効かと計ったときに、ギリギリのところでトランプにいったという可能性はないですかね。
ヤス ありますよ。
西塚 それでトランプにして、それで操っていこうという…となると僕は、エスコバルの話も半分にしろ、別の意味で信ぴょう性が出てくると思う。僕はもう、ずいぶん前からヤスさんが紹介して、コーリー・グッドの話まで出てきてるわけですから、そこまで入れて考えていいような気がします。
ヤス だから、どのような図式かっていうよりも、われわれが現実を創り出すどの想念を解除するかですね。今回、トランプを勝たせた超越的な勢力がいてという話ですね。それがクリントンよりもトランプを好んだということは、最終的にわれわれ自身の集合的な想念の中で、現実を創り得る集合的な想念の、今まで解禁されたことがなかったあるものを解禁してしまったということですね。
西塚 どういうことでしょうか? もう少し具体的に言いますと…
ヤス もっというと、今まで他民族に対する恨みであるとか、異なる宗教に対するものすごい嫌悪感などが存在していた。ただ、さっき言ったように抑圧されてたわけですね。個々の内面のひとつの礼儀として抑圧されていた。
西塚 中間層の話ですか?
ヤス 中間層のみならずですね。すべての人間の中でだいたい抑圧されてましたよ。
西塚 全人類といってもいいくらいな話。
ヤス いや、そこまで極端じゃなくても、たとえば日本でもそうじゃないですか。普通に社会生活をしている市民が、極端な人種差別意識を剥き出しにするというのは、ちょっとこれは憚られるなと思いますでしょ? 思ったとしてもね。ものすごい女性蔑視の持ち主だとしても、それは公けの場で表現するということに関しては、やはり憚られるということで抑圧してるわけです。抑圧されてる限りは、コミュニケーションの題材にもなかなかのぼりにくいし、したがってそれは集合的な大きな意識を形成しにくい。
でも、トランプの勝利以降、表に出しちゃっていいんだよということです。自分が内面に抑圧している蔑視であるとか、偏見であるとか、それは偏見じゃないと。キミの思ってるような感情とか違和感は正しいんだから、どんどん出せというわけです。出せば出すほど、それは極めて広大な集合的な意識になりますね。集合的な意識になればなるほど、それはそれで現実を創り出すための非常に大きな基盤になるわけです。逆にいうと、それが抑圧されていた間は、それは現実を創り出すひとつのチャネルとして有効化されていなかったということです。
西塚 抑えられていた。
ヤス 抑えられていたものが解除されたわけです。この想念にしたがって、是非とも現実を創り出してくださいという。だから今後、何が創り出されるかというと、とんでもない現実だと思うわけです。
社会を維持していく次のシステムとは?
西塚 僕はそれに絡めていうとですね、もちろんその通りだし、パンドラの箱が開いたということでしょうが、抑圧の大もとですね。抑圧された中間層といわれてますが、基本的には資本主義における、お金なんです。お金にみんな苦しめられているわけですよ。そうした状況が飽和状態になって、ここにきて暗号通貨とか仮想通貨といわれてることにしても、おそらく資本主義自体がドラスティックに変わろうとしているのではないか。僕はそれは次の段階へのはじまりであって、あまりだまされてもいけないんですが、いってみれば新しいシステムに移行するだけであって、これまでの貨幣が力を持った資本主義よりは、ひょっとしたらいいのかもしれません。
でも、結局は同じことになるのかもしれません。暗号通貨にいくのかどうかはまた別の問題で、要するに、お金の奴隷などという言葉がここ数年頻繁に出てきましたが、それまでは、ほとんどの人がそんなことは思ってもみなかったわけです。お金がなければ生きていけないというのは当たり前の感覚だった。でも今、それが移行の時期にきて変わってきている。だから面白いんだけども、僕はもっともっと違うオルタナティブを提案していくという方向を見たいんですね。
ヤス それはよくわかるんだけども、僕の視点からいうとこうなんです。現代の最先端の資本主義体制では、社会を維持することが不可能になってきたということです。多くの人がお金の問題で苦しむ。多くの人間が職を得ることができない。一方、われわれのひとりひとりの行動原則の根幹に、資本主義的な原理が非常に深くビルトインされている。
親の保護を受けずに、みんな働くべきなんだという。働くことによって、自らの生きる糧を得るんだと。働くというのはハードな側面がたくさんあるけれどもね。安易な生活保護とか、安易なベーシックインカム制に対しては反対であるという人は、欧米でも多い。そんなに簡単にお金を与えてしまったら、人々は働くなる。社会で労働することは美徳なんだと。これは資本主義ですよ。ただ、この考え方では社会を維持できなくなってきた。
ということは、仕事を持っているかどうかに関係なく全員食わせるためには、ベーシックインカム制であるとか、社会の維持ということをポイントにすると、まったく違った社会の考え方が必要になってくるということです。
西塚 そういうことです。でも、ベーシックインカムという発想自体が資本主義ですから。最低のお金を配分するということなので、大枠としては資本主義です。貨幣経済なわけですね。それが今、変わろうという…
ヤス ビリー・マイヤーがコンタクトしているプレアデス星人の世界ですね。エラ星。政府みたいなものがあって、どんなプレアデス星人でも必要なものは全部、まず政府から与えられる(笑)。社会主義云々というのではなく、社会を維持するためには違った原理が必要だということになってきた。
西塚 まあ、そういうことです。社会主義でも何にしても、お金というものがある。
ヤス 僕なりの文脈の中に置き換えると、西塚さんは別なものを提案したいということですね。
西塚 僕は提案できないんですが、ちょっと言葉が足りなかったですけども、でもじゃあ、次は暗号通貨とか仮想通貨ということではなくてですね…
ヤス 仮想通貨がどうだとか、オンラインショッピングがこうとか、ユーラシア経済圏がこうであるとか、現在われわれが目に見えているもので考えるのではなく、どんな形でも資本主義的なシステムそのものが行き詰っていて、それで社会をメインテナンスすることはできない。そうすると、社会を維持するということを重要なポイントとしておくならば、全然違う社会をモデルにして考えなければならない。そういうような提案が必要だというふうに僕には聞こえる。
西塚 そういうことです。でも、それは新しいものではないかもしれない。昔の話かもしれない。
ヤス それは逆にいうと、昔に出てきた思想を発掘する行為なのかもしれません。
西塚 昔というより、古代ですね。
ヤス 僕は、たとえば原始共産制とか、名前をつけないほうがいいと思いますね。
西塚 そうですね。どうしても歴史的な区分になってしまうので、古くさくなるし、ファンタジーになりやすいんです。
ヤス なりやすい。イデオロギー化しないためには…
西塚 新しいものとして提案したほうがいいかもしれませんね。
ヤス そうそう。プラクティカルなところから考え直したほうがいい。
西塚 結果的に昔にあったじゃん、でいいかもしれません。
ヤス そうなんですよ。だからね、一番怖いのはイデオロギーという価値観なんですね。
西塚 そこですね。イデオロギーは怖いです。宗教と同じですから。
ヤス そう、本当に宗教。だから、いっさいそういうことは語らないで、本当に純粋にひとつのモデルとして、可能性のあるものとして提案していく。
西塚 僕は、いっさい語らないのではなくてですね、むしろ語るべきだと思うわけです。ただ、それをイデオロギーとか宗教にするのは、人のマインドじゃないですか。どんなことを語ったって、イワシの頭も信心からじゃないですが、何だって宗教になるし、イデオロギーになる。主義主張になるわけで。
コーリー・グッドに対するデイヴィッド・ウィルコックの変質
西塚 これまで『おやすぴ』も70回もやってきて、ビリー・マイヤーその他、いろいろな名前もあがってきて、前回はデイヴィッド・アイクの名も出ました。ここにきてちょっとアレ?と思ったのは、前回も話しましたが、コーリー・グッドが来日するという情報がある中、ヤスさんはかなり疑いも持っているし、あくまでも客観的な立場で、もし機会があればそういう場にも参加したいというようなお話がありましたが、僕としては少なからずヤスさんがトーンダウンしたという感じがあるわけです。
去年までは、あの情報はぶっ飛んだ情報でしたが、一番早い段階でヤスさんも情報を出されたと思います。僕もびっくりして、直接本人にインタビューしに行こうかというくらいの勢いだったわけですね。でも、前回あたりのヤスさんのお話を聞くと、話を楽しむためにもあまり近づきたくないといったニュアンスになった。そのへんの何か原因とか、お考えの転換があったんでしょうか?
ヤス 僕の主観的な変化というわけではないんです。整理すると、最初はコーリー・グッドはすごい面白いと思った。『GAIA TV』で毎週木曜に出てくるわけです。彼が最初に出てきたのは2015年の8月ですね。かれこれ1年半続いてきている。それで、最初はコーリー・グッドが中心にしゃべっていた。コーリー・グッドが自分の体験を赤裸々に述べるわけです。それの内容は驚愕すべきものだった。彼のいう「秘密宇宙プログラム」みたいなものが、本当に存在するのかどうか。存在するとしたら、これは大変なことだ。そしてコーリー・グッドの証言というのは、えらい具体性があった。
それに対してデイヴィッド・ウィルコックは、一方的に聞く立場です。コーリー・グッドから最大限の情報を引き出すというファシリテーターの役だった。だから、彼がどう考えているかということは、ほとんど背景に退いていた。純粋なインタビュアーに徹していたという感じです。彼のインタビュアーとしての手法がうまいこともあって、コーリー・グッドが体験したことがどんどん赤裸々に暴き出されてくる。そこに僕はすごい面白さを感じた。これはとんでもないんじゃないかと。少なくとも、その何%かが事実であったとしても、これは大変なことになる。どこまでが事実で、どこまでがそうじゃないのか、それを確認したいという欲望があった。だから、コーリー・グッドに直接会って、インタビューしても面白いかなと思ったんです。
それがですね、去年、インタビューから1年くらい経ったあとですね、だいぶGAIA TVのインタビューが変質してきたんです。特に10月、11月くらいから変質の度合いが大きくなった。デイヴィッド・ウィルコックが中心になったんですね。デイヴィッド・ウィルコックはアセンション主義者です。彼自身が持っているイデオロギーといえるかもしれない。または世界観ともいえる。少なくとも、彼が物ごとを理解していくとき、これからのスピリチュアル的な世界が変化する方向を見据えたときに、認識する枠組みですね。そういうアセンションの枠組みの中に、コーリー・グッドを埋め込むという逆のベクトルになったんです。コーリー・グッドはコーリー・グッドで、それに対して、へえーとか言って、簡単に埋め込まれていく。そのへんからね。かなり興味が失せた。
つまり、デイヴィッド・ウィルコックが持っているアセンション的なイデオロギーを証明する材料として、コーリー・グッドが使われるという図式になってきた。そのへんから相当、冷めたということです。
西塚 ちょっと僕の印象と違うのは、コーリー・グッドの話が出てきたときに、あまりにも面白い話だし、刺激的な話だから、『おやすぴ』でも取り上げて話をしました。そのときヤスさんから、デイヴィッド・ウィルコックは実はこういう人間だったという話を聞きましたね。いわゆるアセンションブームの火付け役でもあったし、しかもベンジャミン・フルフォードさんがわるいというわけじゃありませんが、そのへん、ある種の勇み足みたいなこともちょっとあったという話も聞きました。だから、今回のコーリー・グッドの話も色眼鏡をかけて見て、警戒というわけでもないですが、そういうふうに見ていたとおっしゃっていた。
それがだんだん、話の内容自体があまりにも壮大になってきたし、話としても整合性がとれていた。これは面白いのではないかと、僕もだんだん興味を持っていったし、『おやすぴ』でもさんざん取り上げました。デイヴィッド・ウィルコックも、かつてのアセンションブームの牽引者というよりは、むしろ徹底的にコーリー・グッドを疑ってかかっていたわけです。いろいろな質問をして探ってみたり、お前インチキじゃねえか?くらいの意地悪な質問をしたりしたということがあって、その姿勢はいいよねという話もしましたね。
だから、むしろデイヴィッド・ウィルコックはアセンションブームからある種抜け出して、もうちょっと客観性を持ったインタビュアーとして、ヤスさんも見ていたと思います。しかも、コーリー・グッドの話はどんどん面白くなっていく。毎回『おやすぴ』でも話したという状況がありました。
ヤス でも、やはり一番大きいのは、インタビュアーであるデイヴィッド・ウィルコックの変質ですね。
西塚 そんなに変質しましたか?
ヤス 最初は、純粋なインタビュアーとしてのデイヴィッド・ウィルコックだったんです。コーリー・グッドからできるだけ細かな事実を引き出すという。
西塚 去年の暮れころまで、そんなに変わってなかったような印象がありますけども…
ヤス 比較的最近なんですよ、変わったのは。
西塚 そうですか。僕もいけないんですが、ちょっと『おやすぴ』のアップの間があいたときから、彼も変わった…
ヤス 変わった。ウィリアム・トンプキンスというね、グラマン社の秘密プログラム、Solar Wardenの設計をしたとか、彼が出てきたくらいまではよかった。そのあとにも何人か証言者が出てきて、紹介していない部分もあるんですが、それまではよかったんです。去年の冬くらいかな。急激に変わってきた。『ラー文書』がブルーエイビアンズと同一の存在で、それをコーリー・グッドの口から言わしめることによって、実は、僕が長年言い続けてきたアセンションが起こると。そういうアセンション的なイデオロギーのほうに無理やり引っ張っていく。それから、ガーッと冷めてくるんですね、僕は。
西塚 アセンションの信奉者というのは、何か根強いこだわりがあるんでしょうね…
ヤス デイヴィッド・ウィルコックは、コーリー・グッドと個人的な信頼関係がしっかりあると思うんだけども、その信頼関係を土台にして、デイヴィッド・ウィルコックが本来持っている世界観のほうにねじ込むわけですよ。それに対してコーリー・グッドは唯々諾々とハマっちゃうわけです。そうすると、最初のコーリー・グッドの生(なま)の存在、生の証言が放っていた輝きが全部、失せてくるわけです。
西塚 意外と引っ張られそうな人というか、洗脳されそうな感じはありますね、コーリー・グッドという人は。
ヤス そう。そのあたりから面白さの情熱が引いてくるというのがあった。
西塚 例のコーリー・グッドを呼ぶという話は、まだ進展ないですか?
ヤス まだ進展はしてないようです。
西塚 早く進展させてほしいですね。ぜひ、ヤスさんと対談してほしいです。昨年『おやすぴ』でも、ロフトプラスワンの小さなイベントでしたけれども、コーリー・グッドについて話しましたから、落とし前というと言葉はわるいですが、ちゃんとつけたいですね。質問とかもぶつけて。
ヤス そう。今もメルマガで紹介はしているけれども、かつてのようなワクワク感と面白さはないですね。デイヴィッド・ウィルコックのアセンション思想の要約みたいになっているから。
西塚 どこかで、決着というと大げさだけれども、中間報告というか、今のところこういうことじゃないかというのは、ちょっとやりたいですね。
ヤス そうですね。
西塚 今現在のわれわれというか、特にヤスさんの見解としては、こういういきさつで、こうだと思うということ。
ヤス われわれがこの問題を取り上げた2016年の前半から何があったか、基本的にこういうことだったのではないかという。
西塚 それは発表しましょう。昨年のイベントにきてくれた人たちもいますから。
ヤス そうですね。
FXと人類の集合意識の波動
ヤス これから日本には、確実に不況がきます。不動産業界を中心に破たんの波がくると思います。個人レベルでいろいろ問題がある人がいるのは事実ですが、これまで何とか暮らしてきた人が、どんどん食べられなくなってきている。だから、たとえばFXの手法でも何でも僕が身につけられれば、稼ぐ方法はこれだと教えられるかなとも思うんですが…
西塚 僕も昨年、別の理由でいろいろ勉強しました。そこにはAIの問題も出てくるし、金を稼ぐのはそういうことにまかせてもいいんじゃにかと思って、ちょっと調べたんです。それでちょこちょことやってみた、5000円くらいで。たしかに儲かることはわかります。でも、詐欺が横行してるのと、高城剛さんなどにいわせると、これからFXをやるのは自殺行為だと。なぜかというと、相手はAIなわけです。相場師とか株屋なんていうのは昔の話で、当時は人間の勘と人脈による情報収集能力で何とかなって、大金持ちになった人がいっぱいいる。
でも、今は相手はAIです。どういうことかというと、プロのボクサーになるといって脱サラして、1年も2年もものすごく体を鍛えて、完璧にしたとします。でも、いざ戦おうとすると相手はマシーンで、1秒間に何百発もパンチを繰り出してくる。そういうようなものだというわけです。だから、これからのFXとか、トレード関係の仕事は自殺行為だという意見もあるんですね。
ヤス よくわかる。
西塚 とはいえ、それを逆手にとったりすることもできるかもしれない。特にバイナリーオプションなんてのは二分の一ですからね。上がるか下がるか。でも、それも操作されてたらどうするのか。パチンコと同じで、みんなパチンコに行って、勝った負けたとやってますが、基本的に大きなところで決まっている。
ヤス 基本的にみんな操作されてますよ。AIなんて、かなり早いうちから入っていた。ただ面白いのは、個人もAIが使えるところまで落ちてきたということです。だから、かなり高度なAIの自動売買システムというものが、かなりアベイラブルなものになってきている。いずれにしろ、これは使ってみても面白いかなとは思います。
西塚 そうですね。
ヤス でも、実は僕はFXとかと投資にはほとんど関心がない。なぜかというと、ちょっとデモ口座を開いてやってみたんです。たしかに儲かる。1日、2万とか3万とか儲かるんですよ。でも、やってみて思ったんですが、やはり虚しいというか、これでお金を稼ぐということの無意味さです。嫌悪感があってダメなんですね。
西塚 僕もそうです。これは僕の言葉ではなく、あまり好きな表現でもないんですが、「命を削られていく感じ」と言った人がいました。でも、わからないでもない。
ヤス これはやめたほうがいいというか、少なくとも僕はできない。
西塚 僕もできません、でも、ひとつの可能性としては、それこそAIですよ。5000円とか1万円を突っ込んでおいて、勝手にやってくれるのなら、それはそれでいいんじゃないかと。大負けしなければ。
ヤス そうそう。だから、その勝手にやるAIを監視できるくらいの知識はいる。あともうひとつは、最近ちょっと関心を持っているのですが、アメリカにサイクル研究所というのがあるんですね。1929年からはじまった大恐慌があるじゃないですか。当時、フランクリン・ルーズベルトになる前の、大恐慌を引き起こしたといわれるフーバー政権の経済顧問がいた。エドワード・デューイという人なんですが、この人は、なぜこのような大不況が起こったのか、ということを考えることに生涯を費やした人なんです。財務省の主席経済顧問だったんですが、当時でいえば、反主流の理論を唱えた。
サイクル理論です。経済を司る普遍的なサイクルがあるんだと。それはジュグラーサイクルだとか、コンドラチェフサイクルというところからはじめるんですが、その結果、ある面白い発見をした。ある特定の分野のサイクルがあるとすると、全然違った分野のサイクルとシンクロしているのがわかった。同じ波形を描くとかね。それは比較的今でも知られていることですが、たとえばモンタナ州のシマリスの増減のサイクルと、天然ガスの価格の変動のサイクルがピッタリ一致しているとかね。それくらい距離の遠い波動が一致するわけです。
そうすると、みんな部分的なものの振る舞いである可能性がある。だからFXをやってると、グラフの波形などを見てて、もしかしたらこれもそうかもしれないと。だったならば、これはちょっと面白いなと思いはじめた(笑)。
西塚 僕もそう思います。何でシンクロするんですかね。
ヤス デューイはそれにのめり込んでしまう。ただ、それはあまりにも反主流だったので、拒否はされるんです。戦争のサイクルと人間の認識のサイクルとか、全然違った分野とシンクロする。当時の科学から見ても、現在の科学から見ても、トンデモ系として扱われますよね。ただ、ビリー・マイヤー的にいえば、宇宙の掟のひとつ、普遍的な振る舞いのひとつの表現といえるのかもしれない。そのようにして見ると、波動そのものというのは面白いなと関心はありますね。
西塚 面白いですね。この世はすべて波動といってもいいくらいですからね。全部、絡んでるということです。
ヤス 波動の動きに人間の集合的な意識も関係するとするならば、特にトランプ政権とか、ドゥテルテとかね、このような波はヨーロッパの中にもどんどん出てくると思う。だから、人間が今まで押し殺してきた、まさに抑圧されたものの噴出のサイクルがどんどん勝ち残って、それによってネガティブな現実が創り上げられていくという想念の過程に入った。
西塚 そうですね。
ヤス その想念の動きというのは、改めて読み取ることができる、目に見えるようなひとつの波動になるのかもしれない。だったら、この波動を解説して読み込むという技術は、何としても手に入れたいと思ったんですね。
西塚 僕はそのひとつが、やはりWeb Botだと思うわけです。
ヤス Web Botだと思う。
西塚 ヤスさんのその、ひょっとしたらですね、さっきちょっと腑に落ちたというとヘンですが、ああそういうことなのかなと思ったのは、ヤスさんが抱いたFXに対する嫌悪感みたいなものは、前回のお話でも出たように、やはりWeb Botに対してもちょっと似たような形で、具体的にどれくらい近いかはわからないけども、何かやっぱりあったのかなと…
ヤス ああ、ただFXに対しては、それで稼ぐということを目的にすることの虚しさというか、いやな感じがした。ただ、今のWeb Botというのは、かつてのシナリオじゃないんですね。全然新しいシナリオで、相当な程度当たる。たとえばひとついえば、Web Botで1月25日が転換点だといってたわけです。それでダウが20000ドルを超える。それとともにビットコインもどんどん上昇するだろうし、金価格も上昇する。1月25日は多くの転換点として、データとしては存在するとのことだった。
そうしたら、ダウが20000ドルの大台を突破したのが、本当に1月25日だったんですね。
西塚 珍しく日にちが当たったわけだ(笑)。
ヤス それ以外も、最近のWeb Botの的中率にはすごいものがある。
西塚 今までは日時は別として、現象としてはわりと的中率が高かった。今は何だか知りませんが、タイムラインが短くなって、Web Botすらも的中率が上がってきたということなのかな。
ヤス 上がってきた。今までの的中率が低かったWeb Botというのは、同じシンリオの繰り返しだったんですよ。何かというと、アメリカでハイパーインフレーションが起こってアメリカ経済が崩壊してね、ドルが紙くず化して、食えなくなった人たちの広域自給自足経済圏みたいなものができあがると。それを中心とした新しい文明が栄えてアメリカが変化する、みたいなシナリオがずーっと出るわけですね。どこを切っても同じ金太郎アメみたいなものです。それは見飽きたということです。それがWeb Botへの関心を失った一番大きな理由ですね。
ただ最近は、そのシナリオがガラッと変わったんですね。読んでいると面白い。そうするとWeb上でも、Web Botファンみたいのが出てくる。そしてYouTubeのビデオに出すわけです。クリフ・ハイから許可を得て、半分くらいだったら要約してもいいと。
西塚 そういう人が出てきた。
ヤス 出てきた。彼らのYouTubeのアクセス数もすごいです。また当たったと。
西塚 今度、『おやすぴ』のチャンネルも作りましょうか。
ヤス いいですよ。チャンネルなんか簡単にできますから。
西塚 最初は何回か、ヤスさんにYouTubeに上げてもらいましたからね。
ヤス ええ。初回とか2回目の『おやすぴ』は、覚えてますか? 「憑依ってどう思いますか?」とかってやってた(笑)。話がよくわからない方向に行って、何をしゃべっていいかわからなくなって、集合無意識とかいろんなことを言っていた。
西塚 そうでしたね(笑)。今度、五目舎でチャネルを作ろうかな。そこにお招きするという形で、僕はインタビューしてお聞きするという立場で。
ヤス 最近は、日常生活そのものを相対化するような超常性とは何かと考えるんですが、やはり宗教体験ですね。極めて伝統的な宗教体験、魂に迫る宗教体験、場合によってはそういうものがですね、これからはかなり大きくものをいうような時代に入ってきたかなという感じがします。
西塚 なるほど。僕は以前から高城剛さんの活動に注目してますが、彼は90年代の後半から、21世紀のテーマは間違いなく、宗教と哲学だといっています。
ヤス そうだと思う。
西塚 もう3時間を過ぎましたので、ちょっと途中ですが、今日はいったん終えましょう。ヤスさん、ありがとうございました。
ヤス いえいえ、こちらこそ、どうもどうも。
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