前回、「いい作品というのはまさに主題歌と一体となって作品になっているということだ」と言ったが、『岸辺のアルバム』はまさにそうした作品の一つだと思う。
あのオープニングのジャニス・イアンの「 Will you dance? 」がなかったら、『岸辺のアルバム』ではないし、74 年の実際の多摩川氾濫の実写があればこそ、災害の生々しさとは別の、リアルな “実存” が迫ってくる感じもするのである。
ドラマの内容にもっと寄っていってもいいのだが、ここらでタイトルにもあるように主題歌を見てみよう。
Will You Dance?
Janis Ian
Someone is waiting
Over by the window、
just beyond the stairwell someone's crying
Drowning in the words of the prophets
that are written for the dead and the dying
Someone's lying、No one's buying
何かを待っている人がいる
吹き抜けの階段の上、窓のそばで泣いている人がいる
預言者の言葉にがんじがらめにされているけど、
その言葉は死んだ者、そして死んでいく者に向けられたもの
誰かが嘘をついている
誰も本気にはしていない
Someone is dying.
Panic in the streets
Can't get no relief、someone escaping
Waiting on a line for the holy revolution
Parading illusion
Someone's using、Most amusing
死にかけている人がいる
街の通りは大混乱
救いのない中、逃げようとしている人がいる
列に並んで聖なる革命を待ちながら、
幻想が行進していく
ドラッグをやっている人、ハイにさせられている人
最高に笑える状況
Will you dance、will you dance?
Smell of caviar and roses
Teach your children all the poses
How familiar are we all…
踊りましょう、踊りましょう
贅沢なキャビアと豪奢なバラの香り
子どもたちにも教えてあげて
どうしたら私たちみんな、仲がよく見えるか…
Will you dance、will you dance?
Light fantastic in the morning
How romantic to be whoring
Boring though it may be
Who'll survive
if you and I should fall
踊りましょう、踊りましょう
朝の光の素晴らしさ
ロマンティックな夜のふしだらさ
退屈だろうけど
でも、あなたと私以外、
誰がうまくやってのけるのかしら
Someone is bleeding
Crimson in the night
Strangers、in the light a sudden meeting
Greeting one by one every life runs
flashing before those dashing eyes
血を流している人がいる
闇を深紅に染めて
突然、光の中で見知らぬ人たちに出逢う
一人ひとりとあいさつを交わしていると、
彼らの自信に満ちた瞳の前を
それぞれの人生が瞬く間に過ぎ去っていく
Will you dance, will you dance?
take a chance on romance
and a big surprise?
踊りましょう、踊りましょう
いちかばちか、素敵なロマンスと
最高のプレゼントに賭けてみない?
Will you dance、will you dance?
Take a chance on romance
and a big surprise?
踊りましょう、踊りましょう
素敵なロマンスと最高のプレゼントに賭けてみましょうよ!
(Stop…)
(やめて…)
以上、英文歌詞はジャニス・イアンの公式HPから引用した。
https://archives.janisian.com/albums/miracle.php
歌詞はこういう感じだろうなということで意訳してみたが、どなたかこの歌詞を見て、ほかの曲を思い出さないだろうか。
いや、サイモン&ガーファンクルの「 The Sound of Silence 」なのだが、そんなことない?
歌詞が互いに通じているように感じるのは私だけかな。
「サウンド・オブ・サイレンス」の歌詞には、今は深く触れないが、歌詞の中に、
The words of the prophets are written on the subway walls and tenement halls
という箇所があり、「預言者の言葉は地下鉄の壁や安アパートのホールに書かれている」という意味だが、そのほかにも二つの曲には、いろいろな語句がそのままではないにしても、似たようなニュアンスを帯びて使用されているように思われるのだ。
一つひとつは今は例を挙げないが、共通する “深み” から立ち上ってくるような気がするのである
ちなみに、ジャニス・イアンとポール・サイモンのふたりもどこか似てないだろうか。
もちろん、ふたりとも東欧系ユダヤ人出身だから、顔つきや雰囲気が似るのかもしれないが、それだけではないように思う。
(続く)
Commentコメント
西塚様
岸辺のアルバムの前年に同じくTBSで放映されたグッドバイ・ママも覚えておられますか?
こちらもジャニスイアンの曲が用いられていましたね。
ジャニスがlove is blind と歌う悲しいメロディと坂口良子主演の悲しい内容がマッチしていてドラマも曲も女性に大人気でした。
自身が不治の病の為、幼い我が子を手放さねばならない若き母親。
最終回での、母親役の坂口良子が墓地で倒れ雨に打たれてそのまま絶命していくシーンは幼な子のママ〜と呼ぶ声とジャニスの歌とが被って、もう涙涙涙。
主役が未婚の母であること、余命宣告されて子供をどうするのか焦り悩むこと、襲いかかる体調不良、世のご婦人方は我が身に置き換えて感情移入してしまい強烈なストーリーにやられてしまいましたよ。
2作品共同じTBSのプロデューサーなのでこの方が新進気鋭のジャニスに惹かれてテーマ曲に登用されたところもあるのかもしれませんね。
おりしも街はクリスマスシーズン。
ユダヤ教の人達はメリークリスマスとは言わず、ハッピーホリデーズと言うのだとか。
日本人のイベント好きはボーダーレスなのでともかくなんでもお構いなしですねえ。
ともあれ楽しくやりましょうかね。
あ、カーリーヘア繋がりではジャニスとポールよりもアートガーファンクルの方だと思います。
ほなまた〜
たきこ様
ポストありがとうございます。
>岸辺のアルバムの前年に同じく TBS で放映されたグッドバイ・ママも覚えておられますか?
はい、主題歌でジャニスを日本で一躍有名にしましたね。
>2 作品共同じ TBS のプロデューサーなのでこの方が新進気鋭のジャニスに惹かれてテーマ曲に登用されたところもあるのかもしれませんね。
はい、あるかもしれませんね。
あと、今回の記事では、そう “させられた” という話をしたいわけです。
>あ、カーリーヘア繋がりではジャニスとポールよりもアートガーファンクルの方だと思います。
たしかに(笑)。
ですが、ポール・サイモンとジャニス・イアンは、兄妹かと思うくらいですよ。
なんともいえない共通のルーツを感じます。
あの醒めた視線、内部に秘めている熱情と諦観……
西塚