だるまさんこちら向かんせ世の中は月雪花に酒と三味線…とまあ、こういきたいものです。

Will you dance? 6

TV ドラマとテーマソングは一心同体というか、切っても切れない関係だが、これはアニメでも映画でも舞台作品でもなんでもそうだろう。

それだけ、音楽や曲の歌詞の影響は非常に大きい。

テーマソング、いわゆる主題歌だが、主題歌がいいからドラマもいいとか、ドラマの内容に主題歌が合っているなどという問題ではなく、いい作品というのはまさに主題歌と一体となって作品になっているということだ。

特に日本のアニメやドラマはそうだろう。

TV アニメの第一号『鉄腕アトム』からして、あの、♪ 空をこえて、ラララ、星のかなた…♪ という主題歌なしに、アトムが成り立つだろうか。

♪ 光る海、光る大空、光る大地…♪ の『エイトマン』にしてもそうだし、♪ 白いマットのジャングルに…♪ のオープニングや、♪ 強ければそれでいいんだ…♪ の「みなしごのバラード」がない『タイガーマスク』や、尾藤イサオが ♪ サンドバッグに…♪ と歌わない『あしたのジョー』なんか考えられないというか、いや、最初から聴かされているから、それなしではしっくりこなくなったのだということではなく、なきゃダメだろう。

主題歌込みでアトムであり、あしたのジョーなのである。

きょうび、「みなしご」のなんとかという歌はおそらく作られないだろうし、「ドヤ街」なんて言葉も使われないだろうが、そっちの話はともかく、アニメじゃなくても、実写の『ウルトラマン』だって、♪ 胸につけてるマークは流星…♪ という主題歌を聴けば、どういう物語かほぼわかるし、これは『銭形平次』でも『水戸黄門』でも同じである。

いや、『水戸黄門』は違うな。

ともかく、日本の TV ドラマやアニメは、主題歌だけでも作品の主旨がわかるようになっており、『サスケ』でも『ひみつのアッコちゃん』でも、『忍者部隊月光』でも水谷豊の『バンパイヤ』でも『仮面ライダー』でもみんなそうなのである。

アメリカから輸入されたアニメ、たとえば『少年シンドバッド』や『スーパースリー』、『怪獣王ターガン』、『大魔王シャザーン』等々、おそらく原作には主題歌がないんじゃないかと思うのだが、日本版で放映されたときには、それはそれは名主題歌という言葉があるかどうかわからないが、立派なオープニングの歌からはじまっていた。

もちろん、主題歌ではなくテーマ曲だけの作品もあるわけだが、推測で申し訳ないが、初発から作品の主旨や内容を踏まえた主題歌込みで、これだけ多くの TV ドラマやアニメが制作されてきた国は、世界広しと言えども日本しかないのではないだろうか。

そして、そうした流れは 1977 年の『岸辺のアルバム』を通過しつつ、『金曜日の妻たち』が放映される 1983 年ころまで続くのである。

いや、もちろん 80 年代以降も、主題歌ありきの TV ドラマやアニメはあるわけだが、なんと言うか、制作側が作品を企画し、内容を吟味・調整する中で当然、主題歌・挿入歌を検討するという、もはや日本では当たり前になっている文化がほぼ純粋に続いた時期がそれくらいだろうということだ。

というのは、80 年代になると洋楽シーンにおいてミュージックビデオ、つまり「 MTV 」全盛期に入っていき、それまでは、ミュージシャンやポップアーティストたちの新曲のリリース情報を音楽雑誌やレコード屋の告知で知り、シングル盤や LP を購入していたという流れが、TV の音楽情報番組でアーティストの新曲のライブ映像や、本人たちのプロモーションビデオをまず観るという形に変わっていったからだ。

つまり、マイケル・ジャクソンの『スリラー』あたりから、他のアーティストたちも軒並み曲の内容に沿った、あるいは内容を象徴するような映像を制作しはじめ、一曲を聴かせるというよりは、新曲をちょっとした映像作品仕立てにしてリリースするというスタイルが確立していくのである。

言ってみれば、日本では最初に TV ドラマやアニメ作品があり、その内容に沿った主題歌なり曲を制作・選択してきたが、80 年代に入ると海外の音楽業界では、最初にアーティストたちの新曲があり、その曲の内容に見合った映像作品を制作していくという、ある意味日本の TV ドラマやアニメの制作過程とは反対のコンセプトで、新曲の制作スタイルを確立させていったということかもしれない。

その後、こうした MTV 的な制作スタイルが、世界のエンタメシーンの主流というか常識になっていくにつれ、日本の TV ドラマやアニメの主題歌も、内容を無視することはないにしても、邦楽・洋楽を問わずヒットチャート上位の曲を起用したり、あるいは次第に “タイアップ” と称して、あるアーティストの新曲のセールスを上げるために、人気ドラマの主題歌であることを宣伝したり、あるいは人気アーティストの新曲を主題歌にすることを喧伝して、新作ドラマの視聴率を上げようとしてみたり、つまり日本のエンタメ界は、「今度の〇〇の新曲、月 9 の主題歌に決まったんだって♡」みたいなことになっていくので、やはり 80 年代からの TV ドラマやアニメ作品の内容と主題歌の制作上の関係性は、それまでのものとは変質しているといわざるをえないだろう。

もちろん、「良い・悪い」を言っているのではなく、「違う」ということだ。

そして、先に挙げたもろもろの日本のアニメや実写作品は、適当に挙げたのではなく、いろいろと意味があるのだが、そのあたりのこともまだ先に行かなければ語れないって、これは、あと数回書きますと最初のほうで書いたが気がするが、無理だな、終わるまで書きます、と言い直します。

 

 

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